二川和之
二川和之
1954年香川県高松市生まれ。1976年金沢美術工芸大学日本画科を卒業、1978年東京藝術大学大学院を修了したのち30代半ばから風景画に絞って作品を発表する。現実感に満ちた生々しい空間を描いた作品の数々は、ロシアをはじめ海外の展覧会でも高く評価されている。伝統的な日本画の技法を継承しつつ、対象の確固たる存在感を岩絵の具の重ね塗りで細心に描き出し、静かな風景の中で深さを極めるべく、遠近感や質感そして物の存在感を偽りなく表現した作品にはリアリズムを越えてさらに美しく輝く心象風景へと昇華する。同時に近年は人物画の制作にも注力しており、同一モデルを秒間隔でそれぞれ描き、ひとつの平面作品に落とし込む「秒差」シリーズは日本画の伝統技法と現代感覚が共存する写実形態として注目度を高めている。さらに風景から人物へと傾斜していく先に見出されたのが、自然と人物を象徴的に組み合わせたスタイルである。自然の諸相が人間のかたちを媒介として立ち現れるこれらの表現は、人と自然との境界を問い直す視座を内包している。そこに在るのは、風景への憧憬と、人間存在への静かな問いである。