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日常とアートが切り替わる導入体験|隈研吾インタビュー

2024.05.10
INTERVIEW

Whitestone Gallery Beijingでのインタビューに応じる隈研吾。

日本国内はもちろんアジアやヨーロッパなど、世界を股にかけて活躍する建築家の隈研吾。自然・技術・人間をつなぐ建築を提案する隈研吾が設計したギャラリーが韓国・ソウルにオープンした。2023年9月2日にグランドオープンしたホワイトストーンギャラリーソウルのデザイン設計について、隈研吾自身にインタビューを行った。

隈研吾とWHITESTONEの歩み

フロアごとで異なる、建築とアートの融合

ホワイトストーンギャラリーソウル

歴史的な観光スポットや文化施設が点在する地域として知られている龍山区に、ホワイトストーンギャラリーソウルは韓国初のスペースを構えた。地下1階から地上4階まで、総面積700㎡を誇る3つのメイン展示空間と、彫刻作品が設置される風光明媚な屋上エリアを有する同スペース。屋上からはソウル市内を一望することもできる。

ーホワイトストーンギャラリーソウルは既存の建物をリニューアルする形で新たな建物に生まれ変わりました。フロアごとに異なる雰囲気を楽しめるスペースですが、各スペースにはどのような特徴がありますか?

隈:既存のスキップフロアの構成を活かし、変化に富んだ展示スペースを建物全体に展開しています。レベルの異なるフロアを歩きながら空間とアートを楽しむことができるようになっています。

2階には天井の高い展示スペースを中心に小さな展示空間が取り付き、3階のラウンジから見渡すことができるダイナミックな空間となっているのが特徴です。地階には大階段と一体化した広い展示室があり、ゆったりとした空間が蛇行しながら進行していきます。

そして4階には屋上に通じる石庭と閉じられた展示室があり、こちらは静寂な空間となっています。屋上はソウルの街並みを展望できる彫刻庭園となっており、アートと共にソウルの自然も楽しむことができるのが、大きな特徴です。

ホワイトストーンギャラリーソウル

屋上の彫刻庭園での様子、ソウルの街並みが一望できる。

ホワイトストーンギャラリーソウル

日常の喧騒から抽象的なアート空間へ

ホワイトストーンギャラリーソウル

ホワイトストーンギャラリーの新スペースは、ガラス面を黒く縁取るようにして構成されている外観が特徴の1つとなっている。木々や空がガラス面に映し出され、ランダムに施された黒のエクステリアが周囲の環境をリズミカルに仕切って建築に取り込む。

ーソウルギャラリーは外観がシックなブラックカラーにリニューアルされています。カラーを変更したのには、どのような意図がありますか?

隈:建物を黒くすることでその建築的な存在を消し、都市の日常から白く抽象的なアート空間へと意識が切り替わる導入的な体験を生み出そうと考えました。

改装中のギャラリーを視察中の隈研吾氏。

ホワイトストーンギャラリーソウル

建築家・隈研吾とアート

ホワイトストーンギャラリーソウル

建築家として有名な隈研吾だが、学生時代には建築家とアーティスト、どちらの道に進むか悩んだ時期もあったほどアートとの関係は深い。そのため、「根津美術館」(2009, 日本)や「中国美術学院博物館」(2015, 中国)、「ハンス・クリスチャン・アンデルセン美術館」(2022, デンマーク)など、国内外で多数のアート施設を手掛ける。

ー隈氏はこれまでに美術館の設計を数多く手掛けていますが、お気に入りの美術館はありますか?

隈:最も感慨深かったのは、Victoria & Albert Dundeeです。コンペから完成まで難題が多く、非常に難しいプロジェクトでした。ですが最終的には、Dundeeの市民の皆さんに支持され、喜んでもらえました。それが何よりも嬉しく、やりがいを感じました。

V&A at Dundee (©︎ Ross Fraser McLean)

「ホワイトストーン・ギャラリー台北」(2017年)を皮切りに、「ホワイトストーンギャラリー香港 / H Queen’s」(2018年)、「ホワイトストーン・ギャラリー北京」(2023)、そして「ホワイトストーン・ギャラリーソウル」(2023)と、ホワイトストーンのギャラリースペースを多く手掛けている隈研吾。それぞれのスペースに、建築家・隈研吾の独自の視点と美学、そしてその都市のアイデンティティが織り込まれている。ホワイトストーンギャラリーソウルで、建築とアートの出会いをご堪能あれ。

隈研吾 設計のソウルスペースを訪れる

建築家・隈研吾について

隈研吾 (c) J.C.Carbonne


1954年生。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。慶應義塾大学教授、東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。30を超える国々でプロジェクトが進行中。自然と技術と人間の新しい関係を切り開く建築を提案。主な著書に『点・線・面』(岩波書店)、『ひとの住処』(新潮新書)、『負ける建築』(岩波書店)、『自然な建築』、『小さな建築』(岩波新書)、他多数。

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