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シンガポールの新たなランドマークに|隈研吾インタビュー

2023.10.05
INTERVIEW

隈研吾 ホワイトストーンギャラリーソウルにて

アジアの経済・文化ともに重要な国であるシンガポール。ホワイトストーンギャラリーはアジアのハブギャラリーとして、2023年10月14日にシンガポールに新スペースをグランドオープンする。2023年1月のプレオープンから数ヶ月にわたる改修と準備を終えて、美術館とギャラリーを併設した多機能なスペースをお披露目する。

ホワイトストーンギャラリーにとって、東南アジア初のギャラリーであるとともに、この地域で最大級のギャラリーでもある同スペースのリデザインを建築家の隈研吾氏が行った。2019年には、隈研吾建築都市設計事務所とK2LD Architectsと共同デザインが、2027年に開業予定の「Singapore Founders’ Memorial」の国際建築設計コンペティションの最優秀作品に選ばれるなど、シンガポールとの関係も深い同氏。記念すべきシンガポールスペースのグランドオープンに際して、隈研吾氏にインタビューを行った。

緑豊かなシンガポールを想起させるレセプションエリア

Whitestone gallery Singapore イメージ

ーシンガポールスペースでは木材が幾何学的に組み合わされたレセプションエリアが最初にゲストを迎えます。このデザインにした理由は?

隈:シンガポールの都市の魅力や特徴を考えた時に、大きく豊かな木々を思い浮かべました。ゲストを最初に広く覆われた樹下の空間の中に迎え入れることで、シンガポールの「ランドマーク」を体現し、柔らかな木漏れ日の中でアート空間へと導きたいと考えました。

隈研吾氏によるホワイトストーンギャラリーシンガポールの構想スケッチ

ーシンガポールスペースは広大なスペースに、美術館・ギャラリー・オフィス・作品保管庫と用途の異なるスペースが混在します。目的が異なる空間が複数ある場合、どのように設計を展開していくのですか?

隈:まず最初に既存の空間をどのように活かすことができるかを考えます。シンガポールギャラリーの場合は、倉庫空間を活かした天井の高さが魅力です。その特徴を活かすための空間配分と人の流れを組み合わせることで、空間体験を意識しながら全体計画を展開させていきました。

Whitestone gallery Singapore イメージ

ー日々精力的に活動している隈氏は、「建築家は競走馬」と謳ったり、自身の活動を三輪車や長距離走に例えることもあります。建築家として、現時点でのゴールを教えてください。

隈:コロナを契機に、東京の事務所だけではなく、日本の地方の小さな町に、サテライトオフィスを置くことを考えました。地元の人達とも協働して、新しいワーキングスタイルを提案するためです。今はそれを世界各地に広げようとしています。東京や大都市を中心としない、小さな拠点をたくさん作り、それぞれからデザインをし、発信したいのです。これを早く円滑に進めることが、当面の目標です。

ホワイトストーンギャラリーソウルにて、左:隈研吾 右:ホワイトストーンギャラリー CEO 白石幸栄

現代的な都市国家であるとともに、広がる海と緑豊かな環境が魅力のシンガポール。木漏れ日をイメージしてデザインされたレセプションエリアは、シンガポールの緑豊かな景観とムードを想起させ、ゲストを晴れやかに特別なアート空間へと招き入れる。

以前のインタビューで、ホワイトストーンギャラリーのスペース設計について、「都市のキャラクターを体現した力強い『アイデンティティ』と、平面作品からメディアアートまで急速な進化を遂げる現代アートを受け入れることができるような『フレキシビリティ』を、いかに両立させるかに重きをおいています」と語った隈氏。単なる建築ではなく、都市の中で人々を惹きつける存在としてのデザインを追求する同氏の建築哲学が、シンガポールの新たなランドマークにも息づいている。

建築とアートの融合による未来の名所にご期待ください!

Whitestone gallery Singapore イメージ

建築家・隈研吾について

隈研吾 (c) J.C.Carbonne


1954年生。1990年、隈研吾建築都市設計事務所設立。慶應義塾大学教授、東京大学教授を経て、現在、東京大学特別教授・名誉教授。30を超える国々でプロジェクトが進行中。自然と技術と人間の新しい関係を切り開く建築を提案。主な著書に『点・線・面』(岩波書店)、『ひとの住処』(新潮新書)、『負ける建築』(岩波書店)、『自然な建築』、『小さな建築』(岩波新書)、他多数。

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