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具体解散から50年|大阪中之島美術館で再び現れる具体美術協会

2022.12.27
ART NEWS

「すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合」展示風景より、大阪中之島美術館

日本の戦後美術史において大きな存在感を持つ前衛集団「具体美術協会」。解散から50年という節目の年に、同集団が活動の本拠地としていた大阪・中之島で具体の活動を振り返る展覧会「すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合」が開催されている。大阪中之島美術館と国立国際美術館の共同開催となる珍しい展覧会を、大阪中之島美術館を舞台に紹介する。

大阪中之島美術館で「GUTAI」を分化する

大阪中之島美術館外観より。ヤノベケンジ《SHIP'S CAT(Muse)》越しに同展関連イベント「インターナショナル スカイ フェスティバル」の再現展示バルーンが浮かぶ。

2 館同時開催という類い稀な形式で開催される今展「すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合」は、「分化と統合」というテーマのもと、新しい具体像の構築が追求されている。

「分化」をテーマを掲げて具体の内実に迫る大阪中之島美術館では、「空間」「物質」「コンセプト」「場所」の4つキーワードで展覧会を構成。前衛的な表現がどのようにして生まれ、そして協会によってどのように受容されたのかが、個々の作品を通して語られる。

「空間」に侵食する作品たち

第1章の「空間」では具体作品がもたらす空間そのものへの影響に注目。吉原治良、田中敦子、村上三郎、嶋本昭三、向井修二、名坂有子、元永定正の大型タブローが空間を支配するかのごとく並ぶ。

その中でも、一際目を引くのがタブローの中にあって異質な立体作品たちだ。今展で再制作された吉原道雄《作品》は、天井から滝のように吊り下げられた色とりどりの紙テープが使用されている。また、その発想と見た目の奇抜さで発表当初から注目を浴びていた田中敦子の《電気服》は一度見たら忘れられない刺激的な色彩を空間全体に拡散する。

そして時に大きく鳴り響くベルの音。美術館では聞きなれない大音量のベルの音に、何事かと空を見つめる鑑賞者も多い。展示室に入室してすぐの場所に設置されたスイッチを押すと、田中敦子《作品(ベル)》が自動で順番に音を鳴らしていく。

展示風景より、左手に大型カンヴァス作品の田中敦子《作品》1961、右手に大量の紙テープで制作された吉原道雄《作品》1965/2022。©️ Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association

展示風景より田中敦子《電気服》1956/1986, 高松市美術館蔵。作品保護の観点から決められた時間にのみ点灯する。©️ Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association

展示風景より、左から元永定正《作品》1964, 国立国際美術館蔵、名坂有子《作品》c.1964, 芦屋市立美術博物館と《作品》1964, 宮城県美術館。

左から、吉原治良《作品(黒地に白丸)》1967、今井祝雄《白のセレモニー HOLES #5》1966、名坂千吉郎《作品》c.1970, 宮城県美術館。

物語りをはじめる「物質」

具体にとって物質は最上級に重要な要素だ。第2章「物質」では、具体が物質とどのように向き合ってきたのかを各作家の作品を通して紐解いている。

吉原治良は「具体美術宣言」の中で、「具体美術は物質を変貌しない。具体美術協会は物質に生命を与えるものだ。具体美術は物質を偽らない。具体美術に於ては人間精神と物質とが対立したまま、握手している」と宣言した。

その言葉通り、絵の具の新たな使い方を提案した作品もあれば、布やガラス、砂、樹脂、ビニール接着剤など、従来では考えられなかったマテリアルを画材にした作品も誕生した。

中でも後年絵本作家として活躍した元永定正による絵具のたらしこみや、絵具の詰まったガラス瓶を叩きつける革新的な制作で知られる嶋本昭三など、マテリアルの代表格である絵具に正面切って対峙した作品が、展示室内で存在感を放つ。

第2章「物質」展示風景より

左から、元永定正《作品》1962, 東京都現代美術館、吉原治良《作品》1960, 芦屋市立美術博物館、嶋本昭三《1962-1》1962。

展示風景より、吉原通雄《作品》1956/93。

作品に秘められた「コンセプト」

第3章のテーマ「コンセプト」では、白髪一雄や村上三郎など、具体を代表する作家の作品が並ぶ。

天井から吊り下げられたロープに捕まり絵具ともにキャンバス上を滑走する白髪一雄や、敢えて素材が剥離するよう仕掛けを施して時間をタブローに取り込んだ村上三郎、ラジコンカーを利用したオートマティックな絵画制作を生み出した金山明、自身の作品に対する「内容がない」という批評に着想を経て“空っぽ”という概念それ自体をブリキと照明によって鮮明に浮かび上がらせた山崎つる子など、作品を作品たらしめるコンセプトが、作家自身の言葉とともに展示されている。

展示風景より、真ん中に村上三郎《空気》1956/94, 個人像 ©️MURAKAMI Tomohiko、壁に展示されているのは金山明の作品。©️ Kanayama Akira and Tanaka Atsuko Association

展示風景より、東京都現代美術館に所蔵されている白髪一雄《作品(赤い材木)》1957を中心に、同作家のキャンバス作品が並ぶ。

展示風景より、最右側が山崎つる子《作品》1964, 芦屋市立美術博物館。

作品と空間が交錯する展示場としての「場所」

具体は「グタイピナコテカ」など室内での展覧会だけでなく、「真夏の太陽にいどむモダンアート野外実験展」や「第1回 舞台を使用する具体美術」など、屋外や舞台など従来の作品発表に囚われない活動も積極的に行った。

今展では村上三郎による《あらゆる風景》が大阪中之島美術館と国立国際美術館の両館に設置されており、作品が切り取る風景を場所・風景・時間の異なる視点で鑑賞することができる。

村上三郎《あらゆる風景》1956/93, 個人像 ©️MURAKAMI Tomohiko

他にも、大阪中之島美術館のエントランス天井には吉原治良が“水の彫刻”と称した元永定正《作品(水)》や、泡をテーマにした吉田稔郎の《FORM-A》など、今展のために再制作されたものや、記号をモチーフとした作品が特徴の向井修二《記号化されたトイレ》や、各々の作品をバルーンに吊るして空に掲げる「インターナショナル スカイ フェスティバル」の再現展示など、新しいインスタレーションが見れるのも、2022年の中之島ならではの具体と言える。

元永定正《作品(水)》1955/2022, 本展のための再制作

展示室外で突然現れる、向井修二によって記号化されたアバターたち。向井修二《アバター1.2.3.4.5.》2022年

解散50年の時を経て再び中之島で蘇った具体『すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合』は2023年1月9日まで開催されている。

大阪中之島美術館

大阪中之島美術館 国立国際美術館 共同企画
『すべて未知の世界へ ー GUTAI 分化と統合』
会期:2022年10月22日(土)– 2023年1月9日(月・祝)
開場時間:10:00 – 17:00 *国立国際美術館は金曜・土曜 20:00 まで(入場は閉場の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし、1 月 9 日[月・祝]は両館開館/1 月 2 日[月・休]は大阪中之島美術館のみ 開館) *大阪中之島美術館は 12 月 31 日(土)、1 月 1 日(日・祝)休館
*国立国際美術館は 12 月 28 日(水) - 1 月 3 日(火)休館
会場:大阪中之島美術館 5 階展示室 、国立国際美術館 地下 2 階展示室

展覧会詳細はこちら »

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