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クレマン・ドゥニへのインタビュー|パンデミックを乗り越えた先の大きな展望

2022.07.29
香港

展示風景より、クレマン・ドゥニ《Chercheur de rêve》2019, 140.0 × 95.0cm, 紙・アクリル

香港でフランス文化を紹介するための大規模イベント「Le French May」。ホワイトストーン・ギャラリー H Queen'sは、第30回「ル・フレンチ・メイ」の共同プロジェクトとして、フランス人アーティストのクレマン・ドゥニとファビアン・ヴェルシェール、日本人アーティスの塩沢かれんによるグループ展「Contrasting Confluences」を開催した。

今回はその中の1人、 クレマン・ドゥニをご紹介する。制作におけるこだわりやインスピレーションの源、今後の活動についてインタビュー。ホワイトストーン・ギャラリー H Queen'sでの展示で好評を得た「The River Song」シリーズを含む作品の展開についても話を聞くことができた。

制作中のクレマン・ドゥニ

―制作における核やこだわりとなるものは何ですか?

私の信念は変換の過程にあります。フランスの化学者アントワーヌ・ラヴォアジエはこう述べました。「芸術においても自然においても、生み出されるものも失われるものも何もない。すべては変換されるのだ」と。

私にとって作品を作るということは、自分が得た知識を変換し、感情や社会問題を作品に変換するということです。絵画や彫刻、モザイク画を通して、私は子供の頃に想像していた故郷を探しています。

―あなたのミューズについて教えてください。

人としての「ミューズ」の概念は、画家が人間をモデルにした時代におけるもので、少し古めかしいと感じています。かつては、ポージングや作品作りに何時間もの時間を費やし、関係性を構築して、完璧なモデルを追い求めていました。

しかし今のインターネットや情報の時代において、刺激の源という意味で、私のミューズはインターネットです。対象となるものは目に見えませんが、私はこの社会のフィルター自体に興味をもっています。同じ時代を生きる人々が見ている世界にアクセスできるインターネットという場所から、私は始めるのです。

展示風景より

―最もこだわっている道具(または素材)は何ですか?

私は何よりもサイクルを大事にしており、現時点で“感覚”を探しています。生きている素材と活動しているという感覚を持つことを今の私は求めているのです。その中でも紙は、ここ数年で最も感覚を刺激した媒体です。

それからアクリル絵具は間違いなく「必需品」です。私にとっての必需品は、アート業界ではスタンダードではないかもしれませんが、そんなことは関係ありません。

アクリル絵具は非常に新しい絵具です。プラスチックの一種なので、耐久性と硬度の点で、油絵具よりも優れています。乾燥が早いのが難しいところですが、スピード感を求められるため、判断力が必要になります。

そして3つ目は手です。私は暗闇で作業をするため、指を使って描き、最後に影をつけます。制作中に流す音楽の変化も私にとって重要です。絵を描いているとき、サウンドから科学、哲学、歴史に関するドキュメンタリーへと移っていくことができます。

展示風景より、作品の前に設置した鏡を覗きこむ来場者

―日常のルーティーンについて教えてください。

朝目を覚ますこと以外に、ルーティーンというようなものはありません!

真面目な話をすると、私は4カ月間の繁忙期は午前7時から午前2時まで働きますが、その後、次のプロジェクトが熟すまでの期間は、スランプや休息の時間として、パーティーに行ったり、ガーデニングをしたり、ビデオゲームなんかをして過ごします。

―インスピレーションが浮かばないときやスランプに陥ったとき、どのように乗り越えますか?

スランプに陥った時は他のことをします。 ガーデニングをしたり、森の中やノワールムーティエ島の砂丘を散歩したりしますね。

実は、アイデアが浮かばないときこそ、その時間で充実した生活を送るようにしています! 絵を描くときはひたすら描く。他の事は全て消し去ります。

クレマン・ドゥニ《Draft XI》2020, 46.0 × 70.0cm, 紙・ミクスドメディア

―今後の活動について教えてください。

今はひとつのサイクルの終わりに近づいています。自分の絵画をより総合的に見つめ、次の展示会やシリーズでは、私が10年間で実践してきた媒体すべて(セラミック、モザイク、絵画、文筆、彫刻)を使用しようと思っています。絵を古典的な方法でただ並べて展示するのではなく、白い壁に、媒体と感覚を混ぜ合わせた没入型のインスタレーションを作成したいと思います。

年末から2023年にかけて、フランスだけでなくアジアやアフリカにもしばらく居住し、展示会を行う予定です。

展示風景より

―次回の展覧会ではどのようなことをしたいですか?もしくはすでに進行中ですか?

2020年に私は「The River Song」シリーズをスタートし、絵画作品とブション、そして痕跡を残さないインスタレーションの鳥を用いました。私はこのシリーズを没入型インスタレーションとして考えています。そこでは彫刻や音、調香師の友人であるUgo Charron(名調香師Claude Dirを師事するジュニアパフォーマー)が作った香り、そして鏡の破片を利用することで空間に奥行きをもたせる効果を生み出しており、観客を作品の波に浸っているかのような感覚にすることができます。

気候の不可逆性をより知的に反映して、このインスタレーションを推し進めたいと思い、パリ郊外の町の市庁舎、アルフォールビルとその劇場、パブリックアートセンター(元プリマバレリーナMarie Claude Pietragalla監修)からの招待を受けて、私は6か月の滞在を開始しました。その間、国立自然史博物館の学生と協力して、芸術と生態学から最も遠い若者を対象とした研修コースと生物の多様性に触れるウォーキング体験を作成しました。

この長い滞在経験は、私の没入型インスタレーションのアイデアをより鮮明なものにしてくれました。また、人々やマスコミからの熱狂的な歓迎を受けつつ、ル・フレンチ・メイ期間にホワイトストーンギャラリーで「The River Song」の作品を展示できたことで、私はこのアイデアを再び形にしようと思ったのです。 パンデミックの影響で実現が遅れており、まだ時間がかかると思うのですが、私の次の個展では「The River Song」のトータルインスタレーションを行いたいと思っています。

―最後に一言お願いします。

私はこの1年、バタイユにあるクロード・モネの家に住んでいます。バタイユはパリ郊外の900人ほどの小さな村で、多くのアーティスト(藤田嗣治や、Jean Paul Riopelle、Ogis、Raoul Dufy、Joan Mitchell、長谷川彰一など)のインスピレーションの源と作品公開の場所となっています。

私はこの場所の自然、風景、光に一目惚れしました。ここではすべてが魔法のようです。それが私がここで初のアートセンターを開設しようとしている理由です。そのアートセンターでは、ロマン主義と私たちが住んでいる時代に関する私の考えを中心に活動する予定です。2つの時代は奇妙なほどに似ているんですね。 これらをテーマにしたグループ展のサイクルを展開し、一緒に活動した、もしくは刺激を受けた世界中のアーティストの作品を迎え入れることは、私にとって良い機会となるでしょう。

クレマン・ドゥニ

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