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魂の叫びが美術館を揺らす:ダイ・インによるライブパフォーマンスレポート
2026.08.27
REPORT
現在軽井沢ニューアートミュージアムで行われている展覧会『シン・チャイナ・パルス➤新世代アートを体感せよ!』。ホワイトストーンギャラリー銀座新館で今年3月に個展を行ったダイ・インも出展アーティストの1人だ。彼女が8月8日に来日して行ったライブパフォーマンスの様子を、作品の解説と共にお届けする。
生身の作家が生み出す激烈なパフォーマンス
鈴を鳴らすダイ・イン
8月8日、軽井沢ニューアートミュージアムの展示室は、突如として緊迫した空気で満ちた。白い簡素な布地を身に纏い、顔と肌を血や炎を思わせる鮮烈な赤で塗りたくったアーティスト・ダイ・インが姿を現した瞬間、そこにいた観客たちは息をのんだ。
大型インスタレーション《Temple 2》の中に入っていくダイ・イン。しばらくすると、《Temple 2》から這い出て、手に持った鐘をチリンチリンと鳴らしながら、その周囲をゆっくりと巡る。そのうち、感情を爆発させるように両手を掲げ、激しく舞い踊る。沈黙を裂くように突如として始まった激しい嗚咽、そして絶叫。魂の叫びは、美術館の1階にまで轟き渡るほどだった。その生々しく、時に直視するのが辛いほど迫真の表現に、集まった観客は20分間、釘付けとなってパフォーマンスを見守った。
2万枚の宣紙が作る「生命の内部」《Temple 2》
ダイ・インと《Temple 2》
パフォーマンスの舞台となった《Temple 2》は、中国の伝統的な紙・宣紙(せんし)を用いた没入型のインスタレーション作品だ。2万枚を超える手染めの宣紙を布や綿、ステンレス鋼といった複数の素材と組み合わせて積み重なり、洞窟のような巨大な空間を形成している。長方形に切られた宣紙が幾重にも重なり合い、層を成す様子は、まさに有機的な生命体の組織を思わせる。これは子宮を表した作品だ。
宣紙は中国の伝統的な絵画・書道の世界で長く用いられてきた素材だ。ダイ・インはその素材を、伝統的な文脈から引き離し、身体と生命を問う現代のインスタレーションへと昇華させた。
「理解」を飛び越え、「感じる」ことへ
パフォーマンス中のダイ・イン
今回のパフォーマンスは、展示中の映像作品《Red》(2025)からさらに進化した最新の試みとして披露された。《Red》は香港で初めて実演した際の収録映像である。
ライブ・パフォーマンスは物語を「理解」してもらうために作られたものではない。ダイ・イン自身の身体を通じて、「世界との最初の関係」を観客それぞれに感じてもらうことを目的としている。舞い、叫び、嗚咽するその20分間、観客は解説を求める間もなく、ただそこにある身体の表現にさらされ続けた。
女性の身体を生命誕生の場として捉え、血、痛み、再生をすべての生命に共通する起源として提示するこの作品は、誰かひとりの物語ではなく、生命そのものへの問いかけである。その20分間は、軽井沢の展示室を、ひとつの根源的な問いの場へと変えた。