ホワイトストーンギャラリー台北は、日本人アーティスト角谷紀章による個展 「Realm of Dispersal」 を開催いたします。本展は作家にとって台湾で初の個展です。主要シリーズ《Frosted Window》と《Curtain》を中心に、「見えるもの」と「見えないもの」のあいだに広がる“拡散(Dispersal)の領域”を探り、イメージが氾濫する時代における「現実の風景」とは何かを鑑賞者に問いかけます。
Realm of Dispersal:角谷紀章個展
Taipei
2025.11.22 - 12.27
風景の輪郭をあえて曖昧にすることで、解釈という行為を鑑賞者へ手渡す方法を見いだしました。フィルター越しに見る景色のように、記憶や知覚によって補われ、最終的には鑑賞者が望む風景として立ち現れるのです。
角谷紀章は1993年、兵庫県神戸市生まれ。2022年に東京藝術大学美術研究科日本画専攻博士課程を修了し、博士(美術)を取得。自身の創作を「想像を可能にするための道具」と位置づけ、高い含水性をもつ素材によって曖昧さの気配を喚起します。静謐な画面は日常の刹那をとらえると同時に、現代日本社会における内的な変化を仄かに映し出します。2020年には第46回創画会春季展にて受賞。
角谷の制作は、日々や旅先で切り取ったスナップショットから始まります。そこに意図的なブレやぼかしを施すことで、霞がかった不確かな光景――作家のいう「かろうじて見える風景」へと変換します。この過程は、撮影者としての自己の確かさを確認する行為であると同時に、不可視の領域への問いでもあります。写真という瞬間の記録を絵画で再構成することで、現実と想像のあわい、視覚と心理の知覚が交差する閾(いき)の空間が立ち上がります。
《Frosted Window》と《Curtain》では、曇りガラスやカーテンの表面を思わせる構図が、視線に層状の「ノイズ」を導入します。視界の阻まれた状況は知覚の境界を曖昧にし、鑑賞者の想像力にイメージの補完を委ねます。こうした作品と見る行為の微細な往還のなかから、作家は、絶え間ない視覚情報に覆われた世界では、鑑賞者の能動的な知覚がはたらいたときにのみ作品内の現実が立ち現れる、と考えています。
作家にとって絵画は、現実へと接近する方法であると同時に、そこから適切な距離を保つ術でもあります。作品は時代や環境の変化を受け止めつつ、現実と作品世界が重なり合い、その瞬間に固有の記憶や感情の痕跡をそっと浮かび上がらせます。
2025
Acrylic on canvas
65.2 × 53.0 cm
2025
Acrylic on canvas
53.0 × 65.2 cm
2025
Acrylic on canvas
162.0 × 162.0 cm
2025
Acrylic on canvas
91.0 × 91.0 cm
2025
Acrylic on canvas
91.0 × 72.7 cm
2025
Acrylic on canvas
116.7 × 91.0 cm
2025
Acrylic on canvas
116.7 × 91.0 cm
2025
Acrylic on canvas
91.0 × 116.7 cm
ABOUT
2025.11.22 - 12.27
TAIPEI
Tel: +886 2 8751 1185
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Opening Hours: 11:00 - 19:00
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