現代の浮世絵

京森康平 x 芸艸堂

古今東西の装飾を現代の視点で再解釈し作品に落とし込む、現代装飾家・京森康平。 自身の創作において、浮世絵からインスピレーションを受けることも多くあるという京森が、京都の老舗木版出版「芸艸堂」の彫師・摺師とともに日本伝統の技術を駆使して現代の浮世絵を制作。
版木22枚(44版)、摺り回数191回に及ぶ工程を経て、京森原案の色鮮やかな作品が完全オリジナルの木版画として完成した。 職人の熟練した技で表現される、柔らかな質感と明媚な色彩。
歴史と伝統が育んできた技術を日本の強みと捉え、伝統工芸の文脈を自らが描く装飾的な絵画制作に取り込んできた京森康平の新たな試みである。

京森康平は、古今東西のあらゆる造形物に見られる装飾を現代の視点から再解釈し、平面作品に引用することによって独自の視覚言語の構築を目指しています。人間が自らの手によってつくりあげ、そして誰かの視覚に訴えるという、その装飾のあり方そのものに深く共感する京森は、陶芸や建築、衣服や印章等における装飾の役割や性質へ徹底したリサーチをかけ、それを手工芸的な考え方に根ざした制作技法によって作品化します。装飾における思想や美学、その歴史を振り返りながら制作される京森の作品は、デジタルシフトによってますます人間が手を使わず、またモノを離れていく現代において物体としての造形や表現の価値、自らの手によって何かを生み出すことという、根本的な人間の活動について問い直しをかける機会を提示します。

KOHEI KYOMORI

UN men No.2

2022
Sheet, Paper
37.0 × 24.5 cm

Edition of 100

※エディション番号はお選びいただけません。
※お一人様一回限りご購入可能です。
※発送は2023年4月以降を予定しております。
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職人さんの工房で彫りと摺りを体験させてもらったのですが、当然のことながら、職人さんの技術は簡単に取得できるものではないなと感じると同時に、その技術やこだわりが今日まで脈々と受け継がれていることにも、感動を覚えました。

今回はデジタルで制作した原案を版元にして木版画にする、という新しい試みに挑戦しましたが、自分自身でコントロールできないところで彫師や摺師の方の手技が入ることは、いつもの制作とは違った楽しみがありました。 複数の人の手を介した作品である部分を読み取ってもらえると嬉しいです。

京森康平

熟練の技術で版木を刻む「彫り」。京森の描いた版下絵から、何枚の版木が必要か、どのように色分けするかを見極める作業からその仕事は始まる。
版木には堅い山桜の木を使用し、小刀や透鑿(すきのみ)などを巧みに使い分けて彫っていく。デジタルで描かれた京森の作品を手彫りとレーザーで彫りあげる、伝統と現代の技術を融合させる新しい試みで、版木22枚(44版)を表情豊かに彫り分けている。

デジタルとアナログの融合

デジタルデータで描かれた原画を伝統的なアナログプリント手法である木版で再現しています。製版の部分でレーザー彫刻機を使用するなど、デジタル技術も取り入れて木彫しました。一方で摺りに関しては江戸時代と同じ完全な手作業で制作しています。
手描き、リトグラフ、シルクスクリーン、超高精細プリンター等、アーティストの方は色々な方法でアウトプット出来る現在。木版の風合いと、デジタルとアナログの融合を感じられる作品に仕上がっています。

水性木版の特性を活かし、色の厚みと深みを表現

デジタルで描かれた原画は、色や形ごとに複数の階層(レイヤー)に分かれていますが、最終的に最上層の色が完成作品の色となり表現されています。原画をそのまま木版画に変換すると、ジグソーパズルを組み合わせるように、全てのピース(色版)を隙間なく彫ることになります。
これは技術的に非常に難しいうえに、水性木版の利点を使えません。そこで、違う色の版を重ねると下の色の影響を受けやすい水性木版の特性を逆手にとって、色の厚みと深みを表現しました。
この手法をどの部分に使い、反対にどの部分に使わないかを摺師と相談しながら色版分けを進めました。

版木枚数22枚、版数44版

色により絵の具の粒子の大きさは違います。 また、絵の具の濃度によっては、彫られた線よりも色が太く摺れてしまうことがあります。線が細いほど粒子の大きさ、濃度の影響を受けやすくなるので、場所によっては細く彫る等の工夫が必要です。
基本的に同じ色は一つの版にまとめますが、いくつかに分けるなど、作品によっては版分けの仕方も異なってきます。この版分けの工程で見誤ると、摺工程に多くの手間がかかる上、仕上がりの出来にも大きな影響を及ぼすので、完成品を意識しながら彫り進めました。

現在のレーザー彫刻機では彫れないほど細い線が多くあったのですが、事前にデータを修正し、太めに彫った後に手彫りで修正するなどの工夫をしました。彫りとレーザー彫刻をここまで複雑に絡めて使ったのは今回が初めてです。
それぞれの得意とする部分、また、不得意とする部分を補い合うことで良い結果が生まれたと思います。

彫師 北村昇一

彫師の仕上げた版木に絵具を広げて和紙に摺りこみ、色を重ねて作品を仕上げる「摺り(すり)」。
全体の色調のバランスを取りながら、版木や紙、絵の具などを細かく調整し、何回も、何十回も色を重ねて摺り上げる木版画では、素早く正確に摺るための高度な技術が求められる。
通常15回~20回の色摺りで完成する木版画だが、今回の版画制作では191回もの色摺りを行うことで、京森康平の世界が木版画で余すことなく表現されている。

木版画ならではの「強さ」

デジタルプリントの原画ですが、木版に落とし込んだ際に、和紙の繊維に人の手によって摺り込まれた色の深みはデジタルプリントにない「ものとしての『確かさ』」があります。
木版の技術は他の版種やデジタル出力と異なり、とても単純でアナログな印刷技術です。
素材と素材を結び、人の手から生まれた技術を介さないと生まれない「味」や「誤差」、あたたかみは木版画でしか作れないものだと言えます。

圧倒的な色数と緻密さが生み出す色の鮮やかさ。

原画の緻密な見せ場を崩さないために、まず「水摺り」という紙の目をつぶす作業を行いました。手漉きの和紙には「紙の目」という細かな凹凸があります。「水摺り」はこの紙の目をつぶすことによって、細かな版面を摺りこまずに摺れるために紙に施す作業です。
この作品はレーザーで彫られたシャープな線、細かな模様など、いろいろな要素が入っています。これの特徴を壊さないよう、かつ摺りやすくするために、紙との相性が合うようにコントロールしました。

デジタルの鮮やかさを損なわず手仕事の確かさを残す

摺師にとって、デジタルの色をどうやって木版に落とし込んで再現するか、というのが大きな課題でした。
水性木版で摺ると、どんなに鮮やかさな色でも落ち着いた色味に見えてしまいます。それは紙そのものの色や絵の具が紙の繊維に摺り込まれた影響かもしれません。それが良さでもあり特徴ですが、原画と木版画の両方の良さや特徴を生かしながらも、全体的イメージを崩さない発色の良い絵の具の作り方を考える、良いきっかけになりました。

じっくりと長い時間をかけて作品と向き合う、貴重な時間でした。 ぱっと見ただけでは、木版画とわからないかもしれません。
ただアナログでスローなプリントの木版が今までとは違う表情が見えたような気がします。 長く関わってる私でも、改めて木版画の表現の懐の深さを感じました。

摺師 平井恭子

Gallery Exhibition

京森康平:Impression O

Taipei

2022.12.24 - 2023.02.18

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