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省察とひらめきの旅|中国のアーティスト、ジャン・ミャオが描く「他者の次元」
2023.07.28
INTERVIEW
ジャン・ミャオは1981年生まれの中国人アーティスト。陰/陽、点/線、そしてエネルギー/生命に対する深い探究によって、創作の歩みは特徴づけられている。モノクロームの木版表現や、精神性をたたえた風景油彩の背景を持ちながら、現在は生命という主題へと踏み込み、人間存在のさまざまな相をキャンバスの上で追究している。
本インタビューでは、ミャオが自身の制作プロセス、着想の源、そして2023年7月に北京で開催の展覧会「The Dimension of Otherness(他者の次元)」に込めた深い意味を語っている。
「The Dimension of Otherness」の本質を探る

ジャン・ミャオ《Taoist Trinity and the Self No.35》2020、175.0φ、木製パネル、アクリル、彫刻
その創作ビジョンを形づくる根底の主題をたどるとき、アクリルを幾層にも重ね、その後に彫りを施すというミャオ独自の造形言語は、ひたすらに純粋な美しさとして立ち現れ、見る者に驚きをもたらす。彼女の作品は精神性や宇宙の驚異に触れながら、私たちの日常的な現実と絡み合う視覚的表象を生み出している。
- この展覧会「The Dimension of Otherness」のテーマは何ですか。
ミャオ: テーマは特異なものです。そして作品へと変換されているのは、目には見えない精神世界、そして宇宙における精神的次元です。日常にある目に見えるものと比べると、これらの作品は非日常的なものですが、それでも世界の中に存在しています。アーティストがそれを捉え、想像し、創造しているのです。
その表現手法は実に際立っています。アクリルを何層も重ね、その後ナイフで彫っていくことで、最終的に生まれる視覚効果は予測不能でありながら、同時に状況に委ねられてもいます。開けてみるまでは結果がわからない「ミステリーボックス(お楽しみ箱)」を開けるようなプロセスです。

ジャン・ミャオ《The Dimension of Otherness》2023、ホワイトストーンギャラリー北京展示風景
- この展覧会では異なるスタイルの作品を発表しています。あなたにとってアートとは何を意味しますか。
ミャオ:私は「真・善・美」こそが文明の道を照らす道標であると信じています。時代がどう変わろうとも、人類は常にこれらの理想を追い求めてきました。しかし現代の私たちは、目先の私利私欲に目を奪われ、少々道を見失っているように感じます。それは極めて不安定で危険な方向性です。今こそ私たちは「真・善・美」という根幹の価値観へ急ぎ立ち返るべきであり、私はアートを通じてそれを探求していきたいと考えています。
私が「真・善・美」と言うとき、それは私たちが生命の奇跡的で壮大な起源に思いを馳せ、宇宙の本質へと立ち返ることを提唱しています。生命とは、強欲や争いによって動かされるべきものではありません。むしろ文明に希望をもらい、光と美によって人々の内なる認知にひらめきを与えるものであるべきです。科学や宗教、あるいは社会のさまざまな領域もまた、それぞれ独自のかたちでこの探求に貢献しています。そのなかでアートは無限の寛容さを備えており、真摯な受け入れと感情のつながり、そしてありのままの表現さえあれば、その役割を果たすことができるのです。
古代の影響と芸術

ジャン・ミャオ《Silent Order 2022.5.15》2022、180.0 × 250.0cm、パネル、アクリル、油彩、アルミニウム
現代の視覚芸術において、宗教や精神性の探求への関心が高まっている。仏教は現代アートの文脈において新しいものではなく、過去にもジョン・ケージ、ロバート・ラウシェンバーグ、また作家のアレン・ギンズバーグの作品にも影響を与えてきたが、アーティストの着想源はそれだけではない。より広い意味での東洋哲学もまた、ジャン・ミャオの想像的な思考を形づくる要素となっている。彼女のような中国人アーティストにとって、東洋哲学や仏教との結びつきは歴史に深く根ざしており、現在でもなお変わらぬ意味を持ち続けている。そうした古代の思想など源泉から生み出される彼女の作品は、精神的であると同時に日常的でもあり、詩的であると同時に美的でもあり、個人的であると同時に集合的でもある生命の諸相を体現している。
- あなたの作品には古代文明、とりわけ東洋哲学や仏教の要素が取り入れられていることが見受けられます。これらについてどのように考えていますか。
ミャオ: 私はアーティストとして、そこから得た着想や導きを表現しています。哲学や宗教もまた、人々を啓発し、真理や美について語るための方法論を持っているのだと思います。
象徴的モチーフ:「目」のまなざしと「渦」の旋回

「The Dimension of Otherness」2023、ホワイトストーンギャラリー北京より、「Heavenly Eyes 2023.3.20」2023、217.0 × 160.0cm、パネル、アクリル、アルミニウム、彫刻
ミャオにとって、「目」と「渦」のモチーフはきわめて重要であり、彼女の芸術表現に深く響く、多層的な意味をたたえている。中国の伝統絵画から着想を得ながら、彼女の作品は木版画作品の中に現代性と古典性の双方のエッセンスを注ぎ込んでいる。筆致とは異なり、木版におけるナイフの刻みは消し去ることのできない痕跡を残し、それは人間存在の不可逆性と複雑さを映し出している。この木版の技法を通じて、ミャオは「目」と「渦」のモチーフを作品の中で展開している。
- 「目」と「渦」のモチーフは、あなたの作品に頻繁に現れます。あなたにとってそれらは何を意味していますか。また、それらは作品全体のテーマや物語にどのように寄与していますか。
ミャオ: 生命は、魂、空間、そして物質によって成り立っています。魂の本質は回転するという象徴性を通して表現されます。一方、空間は磁力を持ち、点・線・面によって示されます。これらは三次元的存在を構成する基本要素です。色は光から生まれ、エネルギーを体現しています。私の作品が、他者の内に力を宿し、生命の本質そのものについて考えるきっかけになることを願っています。「Heavenly Eyes herald the Eye of Enlightenment」は、より高次の理解を目指す探求における先触れなのです。
木版的手法が生む色彩のパレット

ジャン・ミャオ制作風景
ミャオの日々の経験と、その芸術に現れる色彩との結びつきは、作品にさらなる深みを与えている。ミャオは、自身の作品と同じように、私たち一人ひとりもまた絶えず変化し続け、過去の経験に形づくられながら、明日の神秘に突き動かされているのだと明かしている。潜在意識のエネルギーと感情の層の相互作用が、存在そのものの核を体現しており、それを彼女は色彩によって巧みに表現している。
- あなたの作品は、アクリルの下にある色の層を掘り起こす独自の技法で知られています。また、日々の経験が作品の色となって現れると述べていますが、そのつながりについてもう少し詳しく教えてください。
ミャオ: 色の使い方は偶然的です。たとえば、最初の層は無意識に描きます。そして翌日になって、それでは不十分だと感じるのです。するとさらに層を重ね、この過程を何度も繰り返します。こうしたすべての行為が最終的な結果に寄与していて、私はそれを潜在意識のエネルギーの融合として捉えています。作品は最後の一層によって決まるのではありません。その前に重ねられた、30から40もの、うまくいかなかった層も含めたすべてによって決まるのです。
この考え方は人間の経験にも通じています。私たち一人ひとりは、いまなお制作途中にある作品のような存在です。過去の数十年が現在を形づくり、そして数え切れない未来の日々がゆっくりと最終的なあり方へと導いていきます。その旅路の中で、私たちは絶えず葛藤し、失敗し、満足し、また不満も抱えながら進んでいきます。私たちの存在がもたらす最終的な効果は、前世から引き継がれた潜在意識のエネルギーによって左右されます。ひとつの作品を見るとき、私たちはそこに埋め込まれた感情や不満足の痕跡をも感じ取ります。そうした不確かさや不調和こそが、深みと真実味をもたらし、その内に宿る深い美しさと誠実さを成立させているのです。

作品の接写
ジャン・ミャオの芸術的歩みにおける場所の影響

ジャン・ミャオ「The Dimension of Otherness」2023、ホワイトストーンギャラリー北京
芸術の旅路にある彼女にとって、北京は文化、歴史、そして個人的な意味に満ちた都市である。ミャオはこの都市に親しんでいるからこそ、いっそう深く制作に没頭することができ、その周囲との強い結びつきを作品へと注ぎ込んでいる。
- ホワイトストーンギャラリーでは、これまで香港、東京、台北であなたの個展を開催してきました。今回の展覧会は北京での初の個展となります。この場所は、作品のテーマや制作にどのような影響を与えましたか。
ミャオ: 北京は私にとって馴染みのある場所です。展覧会に向けた準備にも深く関わることができます。そのことが、作品の主題的な豊かさを高めることにつながっていると私は思います。ホワイトストーンギャラリー北京の新しい空間と、入念に構成された照明の演出は、作品を来場者に見せるための理想的な場を確かに提供してくれています。

ジャン・ミャオの制作風景
ミャオの応答からは、彼女の作品がいかに生命と精神性を映し出しているかについて、より深い理解が得られる。インタビューの中でとりわけ印象的なのは、「目」と「渦」のモチーフの意義が明かされた点であり、それらは人間存在の複雑さを映す力強い象徴として機能している。彼女の芸術は深遠であり、潜在意識のエネルギーと、私たちの存在を形づくる感情の層との融合を示している。
彼女の北京での個展は、2023年8月19日までの開催である。
また、現在軽井沢ニューアートミュージアムにて開催中の、中国の現代アーティストたちによる展覧会『シン・チャイナ・パルス➤新世代アートを体感せよ!』に作品を出品している。更に、ホワイトストーンギャラリーソウルにて、個展『Spiral of Energy』が開催されている。