「聖なる夜の鐘の音は、世界に優しい魔法をかける。」

― 塩沢かれん

塩沢かれんは、視覚以外で認識する世界を表現することを一貫して模索し続けてきた。普段私達が知覚しきれていない無限の世界の存在を光の粒と鮮やかな色彩で具現化する塩沢かれんの作品は、幼少期を過ごしたオランダでの記憶が色濃く投影され、鑑賞者の記憶の奥に眠る幻想の世界のイメージと共鳴していくー。こうした言葉に置き換えることができない感覚の渦を自身の作品を媒介させて鑑賞者の五感へ届けることが、作家の作品制作の大切なテーマとなっている。

本展のタイトルである"Gentle Light" （優しい光）には、“世界中の人々のもとにあたたかな時間が訪れますように。”という作家の想いが込められている。作家の真骨頂である無数の光と幾重にも重なる色彩で紡がれた不思議な夢の世界は、無限に広がる世界の中で作家が確かに知覚した断片であり、人々が忘れかけていたあたたかな記憶を想起させる優しい魔法となるだろう。