目に見えない記憶の感覚や感情は、時が経つにつれ曖昧に色褪せていく。日々の感動の記憶は、小さなお守りとして蓄積され、やがて大きな糧になり私を土台から支えてくれる。

日常の中で感動する光景に出会った時、旅先で自然に圧倒された時、その瞬間を写真や言葉として記録し、記憶をガラスのフォルムに落とし込む。記憶そのものに直接触れることはできないが、ガラスの中に瞬間の色彩を再現することで、半永久的に記憶を存在させることができる。

かつての感動や記憶を呼び起こすことができれば、「今」を生きる自分に対して「未来」へ向かうための最大の励ましになる。

私にとってガラスは「記憶の中の光を形にする手段」であり、触れられないものに触れられるようにする方法である。ガラス素材は、常温では非晶質であり、また半永久的に存在する物質であることから、記憶を表現するのに最も適した素材だと感じている。

「写真」は内にこもりがちな自身の視線を客観的に見ることができる。何に感動し、何を美しいと感じたのか、視覚的に他者と記憶を共有する方法であると捉え、表現手段の一つとして取り入れている。

一方、空気、温度、湿度、匂いなど視覚以外の感覚を文字で伝えることができるのが「ことば」だ。

「うつわ」という形は、外側と内側の空間を隔て、内側に何かを留め蓄積する。この「うつわ」のイメージと自分の中に記憶が蓄積されていくイメージに親和性を感じて制作している。

空気や記憶をそのまま掬い取るように、ガラスで内包したとき、「うつわ」は「記憶を留める」作品へと昇華する。

帰り道、見渡してみるとすぐそこにある、美しい地球の色に気づくきっかけとなったなら。

萩原睦の創作の物語|記憶を刻むガラスアートの秘密

インタビュー記事を読む

Karuizawa Gallery

長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢1151-5
Tel: +81 (0)267 46 8691
Fax: +81 (0)267 46 8692
10:00 - 17:00 (10月 - 6月),10:00 - 18:00 (7月 - 9月)
Closed: 月曜
More Info

ARTIST

萩原睦

略歴

2020
女子美術大学工芸専攻卒業
2023
東京藝術大学大学院修士課程修了
2024
現在同大学院博士課程在籍

 

 

主な受賞歴

2020
加藤成之記念賞(首席)
2022
第70回東京藝術大学卒業・修了制作展 荒川区⻑賞
A-TOM ART AWARD 2022 Art Basel Hong Kong賞
2023
第9回現代ガラス展in山陽小野田 入選
工芸都市高岡2023クラフトコンペ 入選
お困りのことはございませんか?
作家・作品をより詳しく知りたい方はこちら

メールマガジンで最新情報を受け取る

最新のエキシビション情報や会員限定企画をお届けします。