アリカワコウヘイ！は、「Happy」を表現し続けてきた作家である。作品の中でアリカワは、自らが創り上げた分身である「マシューくん」に幸せに満ち溢れキラキラと輝く理想の世界を与えた。

マシューくんを通して、世界中をキラキラと輝く幸福で満たしていくー。それは、恵まれない生い立ちを持つアリカワにとって過去を塗り替えるための救済の作業であり、彼の活動の壮大なテーマでもある。

アリカワの作品が持つ世界観の形成には、幼少期に一時的に預けられた沖縄で初めて経験した愛にあふれた大家族との暮らしと、そこで目にした70～80年代のアメリカ文化が強い影響を与えている。幼いアリカワの目には、アメリカ製の玩具やお菓子が夢のように輝いて見えた。その時に感じた幸福感と強い憧れの記憶が、彼が理想とする「Happy」のイメージと強烈にリンクすることになる。彼の分身が赤毛の幼い男の子「マシューくん」であり、彼の表現する世界が子どもの国のように見えるのはそのためだ。

作家活動20年の節目となる本展覧会では、アリカワの分身として創り出されたマシューくんが主人公となる。りんご、三角屋根の家、小鳥のさえずりなど、アリカワにとって「Happy」の象徴であるモチーフ達を構成することで表現してきたこれまでの作品から、歩く、話す、想像する、など、マシューくんを自由に躍動させた新作シリーズまでを一同に展示する。

マシューくんから放たれる「Happy」が世界中に届くことを願って―。