うつ病になり、絵が描けなくなって2年、何のきなしに金継ぎを趣味で始めた。それは樹脂を使って行う簡易的なものだったが、壊れたものを直す作業が楽しかった。
下田ひかり: 傷付き、壊れたものたちへ
Karuizawa Gallery 2, 3
2025.12.13 - 2026.02.01
金継ぎの練習のためにわざと器をハンマーで割る事もある。その行為は、誰かを傷つけてしまったような罪悪感を持つ。取り返しのつかない事をしてしまった、あの焦りや後悔。そしてその壊れた器を、今度は自分で直していく。ものによっては元よりもより良いもののように見える事もある。
器の壊れ方は様々で、直ったあとの姿は唯一無二のものに変わる。
私は今まで、生きる苦しさや孤独を抱えながらも生きていく事をテーマとして描いてきた。この苦しさを救うのは誰か。結局は死であったり、自分自身が耐えて変化していく事ではないか。世界では絶えず争いが続き、それは現実でもネットでも深い分断を生み続けている。どうしたら救われるのか。答えは出なかった。
テレビで争いのニュースを見つつ金継ぎをやりながら、「直していけばいいんじゃないか」と思った。
2025
Acrylic, Oil on canvas with newspaper and gold leaf
116.7 × 91.0 cm
2025
Acrylic, Oil on canvas with newspaper and gold leaf
27.3 × 22.0 cm
2023
Acrylic on canvas with gel medium and collage
53.0 × 53.0 cm
2023
Acrylic on canvas with gel medium and collage
53.0 × 53.0 cm
2023
Acrylic on canvas with gel medium and collage
53.0 × 53.0 cm
2023
Acrylic on canvas with gel medium and collage
53.0 × 53.0 cm
2023
Acrylic on canvas with gel medium and collage
72.7 × 72.7 cm
2023
Acrylic, Oil on canvas with cotton cloth
72.7 × 72.7 cm
2023
Acrylic, Oil on canvas with cotton cloth
72.7 × 72.7 cm
2025
Acrylic, Oil on canvas with newspaper and gold leaf
27.3 × 22.0 cm
2025
Acrylic, Oil on canvas with newspaper and gold leaf
27.3 × 22.0 cm
2025
Acrylic, Oil on canvas with newspaper and gold leaf
27.3 × 22.0 cm
2023
Acrylic, Oil on canvas with newspaper collage
45.5 × 38.0 cm
2023
Oil on cotton cloth
45.5 × 38.0 cm
2025
Oil on cotton cloth
41.0 × 38.1 cm
2025
Oil on cotton cloth
41.0 × 38.1 cm
2025
Oil on cotton cloth
41.0 × 38.1 cm
壊れたものは元に戻らない。傷付いた心も、体も、人々の関係も、多分なかった頃に戻る事はない。けれど、違う形に直していく事はできるんじゃないか。もしかしたら、それが救済の一つの形なのではないか。
そう思い、今回は今まで制作してきた苦しみの渦中にある作品と、金継ぎを絵に概念的に投影させた作品を並べる事とした。
タイトルの「ものたち」は、人の心、社会、世界など様々なものを意味している。
ABOUT
きらめきと甘美さに満ちた下田ひかりの作品は、可愛らしさと恐怖が同居する世界を同時に魅了的かつ不意打ち的に描き出します。長野県を拠点とする下田は、京都嵯峨芸術 大学および青山塾でイラストレーションを学び、その芸術的旅路を歩み始めました。2008年に現代美術作家としてデビューし、以来、日本、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ各地のギャラリーで作品を発表しています。
日本のマンガやアニメの鮮やかな世界観に触発された下田の作品は、カラフルでイラストレーション的な視点を通して現代社会の諸問題に切り込みます。作品にはしばしば、スーパーマンやアニメの魔法少女のように特別な力をもつヒーロー風の衣装をまとった、星のように輝く瞳の子どもたちが登場します。彼女にとってこれらのキャラクターは 、世界のもっとも弱い立場にあるものを守りたい、育みたいという人間の根源的な願望 のメタファーであると同時に、救済者としてのイエス・キリストなど象徴的な存在にも重ね合わされています。無垢さとファンタジーの対比を通じて、現代社会の複雑さや葛藤が探求されています。
2011年の東日本大震災と福島原発事故は、下田の芸術観に深い影響を与えました。彼女の作品は世界におけるすべてのものの相互連関性にますます焦点を当てるようになりま す。代表作《Whereabouts of God》シリーズでは、チェルノブイリ・ネックレスを身につけた異世界の子どもたちが描かれ、こうした悲劇の地球規模の影響を象徴しています 。《Children of This Planet》では、これらの子どもたちが白紙のキャンバスのような存 在へと進化し、そこに人間経験の無限の可能性―ファンタジーと現実、過去と未来、生と死の交差点―が託されています。下田にとってこれらの子どもたちは、世界の感情や苦悩を受け止める器なのです。
彼女のキャラクターはしばしば虚ろな表情をしており、それは見る者自身の感情―絶望 、孤独、理解への希求―を映し出すものだと下田は語ります。
「彼らはただ“存在する”『誰か』です。虚ろな表情の子どもたちは、彼らを見る人々の気持ちを映す鏡です。彼らは私の感情を注ぎ込む“器”であり、そのきらめく瞳には光と闇の両方が映っています。彼らの角は、人々が世界の不条理に対して抱く怒りや絶望と いった言葉にならない感情を象徴しているのです。」
新作を発表するたび、下田は意味を探し続け、救済と理解を求めて、周囲の混沌とした世界にさらに深く潜り込んでいきます。
2025.12.13 - 2026.02.01
Karuizawa Gallery
Tel: +81 (0)267 46 8691
Fax: +81 (0)267 46 8692
10:00 - 17:00 (10月 - 6月),10:00 - 18:00 (7月 - 9月)
Closed: 月曜




