今展『左側の海』では、青と黒のコントラストで表現された作品郡を展示する。色は温度と明るさの2要素によって表現される意味が変化し、青は流動的で透過性を有し、変化する価値観や、未知への欲求、自由の投影を意味する。一方で黒は、堅実さ、確実さ、構成的であることを象徴する。ふたつの色彩が画面に立ち現れた時、異なる色どうしが互いに浸透し始める。


LIU KE: 左側の海
HONG KONG / H Queen’s
2023.01.11 – 02.11

INTRODUCTION
本展では、LIU KEの作風を象徴する線描画のほか、「対立」概念を由来とした近年の新シリーズを展示。抽象芸術を超えて、哲学、歴史、叙述的な諸概念を衝突・融合させた空間体験を提示します。
「合理性」と 「関係性」は、劉可作品の基本となる構成要素である。 キャンバスという限られた空間の中で、作家は緻密な縦線と力強いストロークが生み出す関係性を観察する。各要素の配置を見極めることで、押し合い、張力を生み出し、物体間の隙間にエネルギーが凝縮される。渦巻くようなストロークや抽象的な記号が時折画面に入り込み、硬直した構図を打ち破る。作家にとってこの過程こそが「合理性」に対抗する行為となる。



歴史的な文脈において、「左」とは急進的で可変的な状態を表す言葉です。その予測不可能で流動的な状態は、深く広大な「大海」と似ています。 一方で、左の反対側には、相対的な「保守」が存在し、それは人類が持つ主観によって構築されます。両者が犇めき合う絶壁のような境界線の真っ只中で、インスピレーションが湧き上がってくるのを感じるのです。






また、作家は一貫して二次元領域の可能性を絵画で追求している。徹底した要素表現を用いてしばしば西洋美術の歴史に思いを馳せるが、それは作家の学者としてのアイデンティティーに依るところが大きい。例えば、「The Woman Coming Down the Stairs」シリーズは、マルセル・デュシャンの「階段を降りる裸体、No.2」(1912年)からインスピレーションを得ている。原作のリズム感やダイナミックな色の交錯を研究しながら、動画像とは異なる独自の二次元的解釈を画面に落とし込む。 劉可は近年、作品の中に窓を取り入れることも始めた。「窓」は鑑賞者と二次元領域の絵画が双方向に行き来できる「通路」であり、観るものを感情の断片が入り乱れる“渦”への航海へと誘う入口であると、作家は考える。そして、絵画を構成する要素の物質性と精神性との二項対立や関係性を探求しながら、劉可は独自の抽象言語を生み出し続ける。












ABOUT


2023.01.11 – 02.28
香港 / H Queen’s
Tel: +852 2523 8001
Fax: +852 2523 8005
Opening Hours: 11:00 - 19:00
Closed: 日曜、月曜