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現代美術家・天明屋尚がもたらす“破格”の美|具象と抽象が共存する「BASARA CORE」

2022.10.26
台北

神話世界の荒ぶる神々や甲冑武者、江戸の侠客、現代の戦隊ヒーロー。古今東西の英雄たちを日本の伝統美術の文脈にのせて描いてきた天明屋尚による個展『BASARA CORE: The World of TENMYOUYA Hisashi』を、ホワイトストーンギャラリー台北にて開催している。展覧会では毎回新たな様相を見せてくれる天明屋尚が、今展で抽象美術を取り入れた新作「CORE」シリーズを公開。作家にとって新たな境地を披露する個展について、作家本人にインタビューした。

展示風景より

ー今展のタイトルにある “BASARA CORE” とは?

天明屋:私の作品制作におけるコンセプト “BASARA(ばさら)” は端的に言うと、「華やかな美、過剰な美にして覇格な美、破壊的な美」です。これまでのステレオタイプな日本像を覆し、武人的な日本のストリート文化の地平から、新たな日本の自画像を描こうとする挑戦であり、同時に現代美術と日本美術の垣根をなくして接続する試みがBASARAであり、私の決意表明でもありました。

しかし今回の個展では、“破格” つまり自らのカラを破り変革をもたらしたいと考えました。アーティストは自身のスタイルを一度確立すると、死ぬまでそれを繰り返す作家がほとんどのように思います。そんなつまらない事だけはしたくないし、むしろ確立したスタイルなんて、ぶち壊してしまえばいい!

自分の檻を蹴破り、そこから脱出する試み。そうした姿勢がBASARAであり、今展「BASARA CORE」のアイデアの元になっています。

展示風景より

ー新作「CORE」シリーズはBASARAの美学にどのような影響を与えていますか?

天明屋:今までのBASARAは、日本神話に登場する荒ぶる神スサノオ、南北朝期の婆娑羅、戦国末期の傾奇者、幕末の奇想絵師から現代の荒神としてのゴジラまで、日本のストリートに連綿と根づいてきた華美にして破壊的な美の系譜をBASARAと総称してきました。

そこに、日本美術を代表する具体やもの派のような抽象美術の概念をも取り込むことで、新たな段階に拡張し、BASARA自身のコンセプトがより強固なものになると考えています。抽象美術以外にも、これからも新たなモノをどんどん飲み込み、さらなる拡張をはかる予定です。

左から、天明屋尚《血》《破》《鏡》。虚空が印象的な中央作品が新作「CORE」シリーズ

ー個展開催に際して、意識した点はありますか?

天明屋:私は個展で作品を発表する際、コンセプトや描写方法が毎回大きく異なります。そのため、個展ごとに違う人が描いたと思われてしまうことも多々あります。描き方やコンセプトは違えど、これまで私は、神話世界の荒ぶる神々や甲冑武者、江戸の侠客、現代の戦隊ヒーローに至るまで、一貫して英雄的なイメージを日本美術の文脈に載せて描いてきました。

その中には侠客や刺青といったモチーフを扱った作品が多くあります。日本ではあまり良い印象をいだかれない刺青ですが、欧米に目を向ければ18歳から40歳までの約4割の人が入れているほどポピュラーな文化です。

国が違えば考え方も全く変わります。私の作品は国内と海外では受け止められ方が違うと思うので、観る人が今展をどのように感じるか、楽しみです。

「BASARA展」2010, スパイラルガーデン

天明屋尚個展「国津神」2019, ミヅマアートギャラリー

ー作品の方向性を決める上で重要なことは何ですか?

天明屋:革新的であることが重要です。私の掲げるBASARAの概念に沿っていることももちろん重要ですが、自分の中で革新的であるか、という点が常に重要です。

作品制作の様子

ー今展覧会のcoreシリーズ制作において、何から、そして、誰からインスピレーションを受けますか?

天明屋:具体やもの派に代表される日本抽象美術の流れや、ヒエロニムス・ボッシュ(Hieronymus Bosch)の祭壇画、葛飾北斎の諸国瀧巡りの浮世絵といった作品に加えて、映画『マトリックス』やマンガ『AKIRA』の爆発シーン、そしてブラックホール、タイムトンネル、次元の裂け目、ピクセルなど、様々なジャンルや概念からインスピレーションを受けて制作しています。

天明屋尚《Japanese Spirit 18号機》:2015-2021, 200.0×92.0cm, ブラックジェッソ・アクリル・金箔・木

ー「BASARAは日本美術の新たなアイデンティティを模索する試み」と天明屋さんは仰っていますが、日本の伝統文化についてはどう考えていますか?

天明屋:日本の伝統文化や日本文化を世界の人々にもっと知って頂きたいという思いがあります。

もののあわれや、侘び・寂び・ZEN、あるいはカワイイやオタク文化。それだけが日本のアイデンティティではない。素朴で繊細な従来の日本像も日本文化の一端ですが、華美でド派手な祭りや、イキな文化、歌舞伎などの活気ある文化もまた、日本の文化です。

例えば、世界的に評価されている小津安二郎の静かな世界観の映画もあれば、黒澤明の『乱』のような激しい華美な映画もまた日本なのです。

私は活気ある激しい文化、華美で破格な文化をBASARAと名づけて、作家活動のコンセプトとしています。自分の作品を通して、日本の伝統文化から現代の文化まで、日本の文化を皆さんに是非とも知ってもらいたいですね。

展示風景より、天明屋尚《飛ビ出ス百鬼夜行洛中洛外図屏風(六曲一双)》2017

展示風景より

制作にあたって革新的であることが何より重要であると語った、天明屋尚。展覧会場では、作家初となる抽象画「core」シリーズと、天明屋の代名詞ともいえる古今東西の英雄たちを描いた作品が、同一空間上に並ぶ。具象と抽象、旧作と新作が、対極的に激しくぶつかり合い共鳴する様を、ギャラリー会場とオンラインエキシビジョンでご照覧あれ。

展覧会詳細はこちら »

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