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日本初個展を果たしたウー・シャンの今後の展望|展覧会インタビュー
2022.8.10
銀座, 日本
漂うようにキャンバスの上を彩るコントラストの強い色彩。一見対照的な数々の明るい色を混ぜ合わせているのに不思議と調和を感じられるのが、中国出身アーティストのウー・シャンの作品だ。そのユニークな作風から、メルセデス・ベンツやチャイナ・ファッション・ウィークなどの有名ブランドとのコラボレーションも経験し、中国国内での展示会も盛んに行われている。
そんなウー・シャンの日本初となる個展『光彩の連続性』がホワイトストーンギャラリー銀座新館で開催されている。パンデミックの影響で日本来日は叶わなかったものの、銀座での展示に前向きな姿勢を見せるウー・シャンに個展への意気込みをインタビューした。
『光彩の連続性』展示風景より
-本個展のテーマである『光彩の連続性』について教えてください。
『光彩の連続性』というコンセプトは、前回の香港での個展のテーマである『Light of Nature』とも関連しています。私は、世界に色というものは存在しないと思っています。色とは光の反射であり、目の寛容さ、心の清らかさです。必要なのは色ではなく、光と信仰なのです。
『光彩の連続性』展示風景より
-今展は日本での初個展となりますが、日本で個展を開催する意義とはなんですか?
幼い頃から日本の文化、アニメ、音楽、アートが大好きでした。私の作品を東京で発表し、日本の人々に見てもらうという夢が叶いました。私にとって今展は日本で最初の展示であるだけでなく、海外で行う初の個展でもあるので、私のキャリアにおいてとても大きな出来事になります。
ウー・シャン《Global Santa》2021, 100 × 80cm , カンバス 油彩
-本展示のメインビジュアルに『Global Santa』を選んだ理由を教えてください。
『Global Santa』はブラシストロークや線による様々な媒体の包括的な表現であるというだけでなく、制作過程における偶発性をも表現しています。自発性と確実性、偶然と必然との間のバランスを見つけることで、キャンバス上で絵具が漂い続けることができる、安定した構造を持つ形の合理化という循環に戻ることができます。この作品は「グローバル化」に対する私の理解を形にしたものです。元来の形式的な構造は、徐々に解体され、“意味のある”形になっていきます。
-あなたが絵を描く理由や、創作活動のモチベーションを教えてください。
私は自分のアートの中で生きて、呼吸をしています。食べるのと同じくらい、なくてはならないことなのです。日常生活にほんの少しの「色」を添えるのが好きです。人生は真っ白なキャンバスのようにシンプルですから。シンプルだからこそ、毎日を新たな気持ちで向き合うことができます。また、絵を描くことによって私は周囲を忘れて自己意識に向き合い深く掘り下げることができます。絵を描いているときはエネルギーを感じますし、絵を描くときに感じる高揚感が大好きです。
『光彩の連続性』展示風景より
-作品のテーマやモチーフはどのように決めていますか?
私は作品の中に「大胆な女性の視点」をもたせたいと思っています。それが私の作品の核であり、原動力になっています。芸術的なキャラクターを作り、革新的かつ大胆な方法で表現する、そのために私は非現実的な構図によって人間と自然(動物)との関係を強調することにしました。
私の作品に特徴的な羽のような抽象的ストロークは、私の自由への探求を表現するための翼をほのめかしています。私は、人間は動物と同じように自由に飛ぶことができると信じています。それ故に、私の作品のテーマは、大きく2つに分けられます。1つ目は人間性を擬人化する動物。そして2つ目は、束縛することができない風と環境をモチーフにした、自由に流れるような色彩と翼です。
-作品を作るにあたって必要な条件はありますか?
絵を描くのに広いスペースは必要ありません。想像力と感情さえ準備できれば、場所は10平方メートルもあれば十分です。絵の具とキャンバス、片手にコーヒー、それからジャズ音楽が流れていれば最高ですね。
-一番こだわっている道具(または素材)は何ですか?
筆やペンだけでなく、ジョウロやペイントローラー、版画板、スクレーパー、ワイヤーボール、ペーパータオルなどの変わった道具ですね。それから直接描く道具としての指も大切です。とにかく思いつくもの全てにこだわっています。
ホワイトストーンギャラリー香港 / H Queen’sで開催された『The Light of Nature』展示風景より
-今年2月に今後の展望についてお聞きした時は、「創作に集中する時間を増やしたい、大作を作りたい」という風に仰っていましたが、現在はどうですか?
はい、この6か月で180 x 280cmの絵を描き終えました。この絵は9月末の北京コンテンポラリーフェアで展示されます。 10月の台北アートフェアと北京での展示会にも5点の大型作品を出品する予定です。
また、台北で来年行う個展に向けても準備を進めています。絵画は長い時間をかけて行っていくプロセスであり、私はいつもこの先の自分の活動を楽しみにしています。
-最後に一言お願いします。
それぞれの色は、キャンバス上で形を成すために独自の表現をしていると思います。私の作品は、混沌の中に秩序感覚をもたらすため、抽象的で形式的な技法と比喩的な技法をバランスよく用います。私の絵をじっくりと見ていただければ、宇宙の流れを表現するブラシストロークと抽象化の動きの中に、比喩的な形が隠されていることが分かってもらえると思います。
『光彩の連続性』ホワイトストーン銀座新館
『光彩の連続性』はホワイトストーン銀座新館にて8月27日まで開催。また、オンラインエキシビジョンでは展示作品に込めた想いを作品とともに観ることができる。