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絡み合う人間心理の奥底を投射する|LICACO インタビュー

2023.09.28
INTERVIEW

LICACO

現代アートの未来の一翼を担うべく、ホワイトストーンギャラリー銀座新館では、気鋭のアーティストたちによる『Group Exhibition of Gifted Artists:Dimensions II』を開催する。新たな才能発見と表出の機会であるとともに、複数の作家の作品が同一空間に存在することは鑑賞者のみならず、作家自身にも新たな視点をもたらすだろう。

本展では6人のアーティストたちの内なる世界に迫るべくインタビューを実施。同じ質問を投げかけることによって、彼らがなぜ現在の表現へと至ったのか、そして彼らの作品が映しだす現代社会とアートの関係を解き明かす。

アートは人間最大の娯楽。表現したいのは「存在の奥底にある愛しさ」

LICACO《こんな花がありました No.2》2023, 97.0×162.0cm, カンバス・油彩

1. 制作を始めたきっかけ、そして今も続けている理由は?

ー幼い頃から母に美術館や映画館、歌舞伎など、多くの芸術文化に触れさせてもらっていました。単に絵を描くのが好きということもありましたが、表現で人を魅了できるアーティストたちを心底羨ましいとも思っていました。そんな憧れから美術の道に進んだように思います。

これまで作家になるという夢を追いかけ、制作をつづけ、人に観ていただく機会もありました。そんな時に、私の作品が人々に何かしらの影響を与えることもあったのです。アーティストたちへの憧れや夢が、少しずつ叶っているのではないかと思い、今もその憧れを追い続け、絵を描きつづけています。

2. 自分自身が考える、あなたの作品の特徴は?

ー私の作品は主に、「人間の底にある愛しさ」をテーマに子供たちを描いています。もちろん生き物には喜び、悲しみ、怒りなど、単純な感情の尊さもあると思いますが、私の作品にいる子供たちをみて、違和感や不快感を感じながらも、それ以上に愛らしさを感じてほしいのです。子供はとても純粋で、汚れのない生き物ですが、そんな子供たちの中から、複雑な感情が露わになった時、人類の根本にあるなにかを感じるのです。

LICACO《こんな花がありました No.1》2023, 72.7×53.0cm, カンバス・油彩

3. キービジュアル《こんな花がありました No.1》はどんな作品?

ー今回展示するのは「こんな花がありました」というテーマで制作した作品群です。キービジュアル《こんな花がありました No.1》はそのひとつで、紫陽花をモチーフにした油彩画です。梅雨の終わり頃、道で咲いていた紫陽花から着想を得ました。

以前は鮮やかに咲いていたであろう花と、その花を追いかけるように後ろに咲く小さく儚い花を見て、雨の中にある健気な命を感じたのです。この作品を通し、静かな空気の中にある確かな熱を、どうか感じていただきたいです。

4. 影響を受けたアーティストや作品は? その魅力は?

ー影響を受けた作家は数えきれませんが、最も影響を受けたジャンルは映画です。私は表現で人を魅了できるアーティストたちに憧れをもち、美術の道に進みました。魅了された作品は数多くありますが、素晴らしい映画を見終わったときの、胃にどんと響いてくるような余韻や体験は、そうあることではありません。「ではなぜ映画の道に進まないのか?」と思うかもしれません。圧倒されるという貴重な体験を、私の絵を通して感じてもらうことが私の夢のひとつです。

Group Exhibition of Gifted Artists:Dimensions II

5. あなたにとって「アート」とは?

ーアートとは人間の最大の娯楽だと、私は考えています。娯楽というと、裕福な人たちの意地汚い遊びのように聞こえるかもしれませんが、私はこの娯楽こそが生きる喜びだと思っています。

アートとは何も作品だけではありません。いきものが生まれ持つ感情、日常の中に潜む事柄、整えられた自然界、全てが私たちの心に喜びを与える娯楽だと感じます。そしてそのひとつとして、絵画、彫刻、映画や舞台などがあると思うのです。

6. 今回のグループ展に期待することは?

ー今回、貴重な機会をいただき、グループ展に参加させていただくこととなりました。私は今まで、個展や自らが選んだメンバーとのグループ展、大学での展示のみでしか作品を発表していませんでした。今回のグループ展で自分の見てこなかった世界を体験し、また自らの心の底に触れるような経験を誰かにもたらすことができたら、と願っています。

7. 今後の展望は?

ー私は自分の中にある感情、感じたことをもとに、人間の愛しさというテーマで作品を制作してきました。今後はこのテーマを、他者の経験、社会や世界の事柄からすくい上げ、更に見解を深めるつもりです。そのためには日本だけに留まらず、他国の文化に触れ、多くの人たちと関わり合いながら生きていきたいと考えています。

LICACO《こんな花がありました No.3》2023, 65.2×53.0cm, カンバス・油彩

素朴な空間、子供でありながら老成した面持ち、敢えて不自然な姿態(ポージング)、そして含みのあるタイトル。一筋縄ではいかない人間の存在を、異質性や不快感から目を逸らさずに表現するLICACO。その根底を成すのは、大いなる人間賛歌である。

『Group Exhibition of Gifted Artists:Dimensions II』は、2023年10月21日まで。ホワイトストーンギャラリー・オンラインストアでは同展覧会をいつでもオンラインでご覧いただけます。

展覧会詳細はこちら »

LICACO
2000年新潟県長岡市出身。2023年東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業。在学中、油画科及び彫刻科の成績優秀者を対象に授与される久米佳一郎賞を受賞。2021年新潟県長岡市にて初個展。「複雑かつ曖昧にしか生きられない人間というものの愛しさ」を制作のテーマに掲げ、油彩画や銅版画をとおして表現する。人の心の奥深くにたゆたう感情や無意識裡に醸成される記憶の重なり―その源流に揺さぶりをかけることを願う。奇怪さ・静謐さ・ノスタルジーを同時に兼ね備えた画風、散文調で未完のタイトル―それらは観る者の心理を否応なく呼応させる。

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