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好奇心から対話が生まれ、問いは現代アートへ結晶化する:チョウ&リンインタビュー

2026.08.13
INTERVIEW

写真家と経済学者というまったく異なる専門性を持つアーティストデュオ、チョウ&リン。各国政府の貧困線(The Poverty Line)に基づいて1日に使える食費を算出し、その予算で購入した食料を、当日の現地の新聞の上に並べて撮影したアートプロジェクト『The Poverty Line』シリーズで有名だ。

社会現象のリサーチから陶芸・テキスタイルへの素材の拡張、そして生成AIへの挑戦まで、公私共にパートナーでもある二人の対話から、その思考の核心へと迫るインタビュー。

チョウ&リン “Part of The Poverty Line – Malaysia” 2026、各58.0 x 38.7 cm(6点組)、アーカイバルペーパー(ハーネミューレ マット ファインアート フォトラグ)にジクレープリント

チョウ&リン “Part of The Poverty Line – Malaysia” 2026、各58.0 x 38.7 cm(6点組)、アーカイバルペーパー(ハーネミューレ マット ファインアート フォトラグ)にジクレープリント

ーお二人はそれぞれ写真家と経済学者という、全く異なるキャリアバックグラウンドをお持ちです。何がきっかけで共同制作を始められたのでしょうか。また、なぜ現代アートという形で作品を発表することを選ばれたのですか?お二人の個人的な人生が、どのようにして芸術活動へと移行していったのか、その経緯をお聞かせください。

C&L: 私たちがシンガポールの大学1年生として初めて出会ったとき、私たちはまるでスペクトルの対極にいるかのようでした。当初、私たちが互いに惹かれ合ったのは、性格、経歴、そして考え方において、ほとんど正反対と言えるほど異なっていたからです。私たちは好奇心をそそられ、多くのことを交換し、探求し、議論する中で、関係を深め、育てていきました。ある意味で、それは私たちが人生やアートに取り組む姿勢そのものを捉えています。カップルとして、一緒に共同制作をすることになるとは全く予想していませんでしたが、不思議なことに、それはごく自然なことのようにも感じられます。私たちの対話を現代アートに置き換えることで、構造化された探求を、制約のない感覚的な体験へと変えることができました。それは、抽象的な世界の潮流を、人間的で、具体的で、感じられるものに変えることでもあります。

ー異なる専門分野をお持ちですが、一つの作品を制作する過程で、それぞれの視点がどのように補完し合う(あるいは衝突する)と感じていますか?

C&L: ペアで活動するということは、絶え間なく続く、生きた対話に足を踏み入れることを意味します。アートプロジェクトに取り組んでいるとき、私たちはリサーチやその結果について議論し、意見をぶつけ合うことがよくあります。そして最終的には、たいてい私たち双方の世界観を組み合わせた視点にたどり着きます。そこでは話すことと同じくらい、聞くことも大切です。コミュニケーション、オープンであること、そして相互尊重が、私たちのアートと関係にとって重要なのです。

チョウ&リン “Decentralized Value Systems 2026 0009”, 2026, 既製品のテーブルランプ、セラミックカプセル(サイズ可変)

チョウ&リン “Decentralized Value Systems 2026 0009”, 2026, 既製品のテーブルランプ、セラミックカプセル(サイズ可変)

ーアート作品を制作するという明確な目的を持って、最初からデータをリサーチされるのでしょうか?それとも、リサーチでデータに没頭する中で、後からアートで表現したいという衝動が生まれるのでしょうか?生のデータがアートへと変換される舞台裏のプロセスについて教えてください。

C&L: 私たちの制作プロセスは、尽きることのない好奇心の実践です。私たちは、ニュース、歴史、ポップカルチャー、経済、そして日々の生活の活発なリズムといったものに幅広く没頭し、思考の断片を集めています。そうして、増え続けるメモや疑問、観察のアーカイブを管理しています。ほとんどの種は眠ったままですが、時折、あるアイデアが根強く残り、育まれることを求めてきます。私たちはこれらのコンセプトを時間をかけて寝かせ、その重みを確かめ、根底にあるシステムがその形を現すまで待ちます。アート作品そのものは、目には見えない長い精神的な育成期間が落とす、物理的な影にすぎません。

ーこれまでの活動は二次元のメディウムである写真が中心でしたが、今回の展覧会では陶芸やテキスタイルといった新しい素材へと表現を広げています。この変化のきっかけは何だったのでしょうか。また、写真だけでは捉えきれなかったどのような要素を、これらの物理的な素材の中に見出しましたか?

C&L: 私たちのアートは常にコンセプトや問いを中心に展開してきましたが、最初の表現方法は写真でした。写真は、ある視点を切り取りながら、リアリズムとその場にいる感覚を伝える言語です。約200年の歴史があり、人々は今なおこのメディウムを解釈する新しい方法を見つけ続けています。それと同時に、私たちは人類の発展とより長い歴史で結びついている他の素材も探求してきました。すべての素材は、それ自身の記憶、重み、そして歴史を持っています。陶芸は、大地、労働、そして永続性を語ります。テキスタイルは、構造、親密さ、そして家庭的なものを想起させます。私たちのコンセプトは一貫していますが、それらを異なる素材を通して解釈することで、作品に異なった、重層的な意味が与えられるのです。

"Blink – Aloo Paratha 2025" のクローズアップ

ー新作シリーズ『Blink』は、生成AIという非常に現代的なテーマに取り組んでいます。過去のプロジェクトで扱ってきた統計データや物理的な日用品と比較して、AIはアーティストとして捉えやすいテーマですか、それとも全く異質で捉えどころのないものですか?

C&L: 正直に言うと、私たちはAIの現在の支配的な状況と進化の速さに心地よさを感じていません。しかし、このような技術革命こそ、200年前に写真が登場したときに画家たちを進化させたものです。写真は世界を「鏡のように映す」という絵画の役割を「殺し」、その結果、絵画は世界を「解釈し、歪め、表現する」ものとして自らを再創造しました。私たちが今、モネ、ルノワール、ゴッホ、マティス、そしてポスト印象派の絵画の美しさを認識できるのは、このおかげです。ですから、人間のアートとAIが生成した作品を比較することを含め、アートの形態に関する実存的な問いが生まれるでしょう。私たちは、意図、歴史的共鳴、そして共感が、いかにしてアートと人間性を創造するのかについての、これらすべての批評的な問いを歓迎します。

チョウ&リン“Blink – Aloo Paratha 2025” 2025、95.0 x 130.0 cm、キャンバスに熱転写プリント、コンピューター刺繍

チョウ&リン “Blink – Aloo Paratha 2025” 2025、95.0 x 130.0 cm、キャンバスに熱転写プリント、コンピューター刺繍

ーこのプロジェクトの制作プロセスにお子さんたちを参加させようと思われたきっかけは何ですか?また、彼らと一緒に作業する中でどのようなインスピレーションを得ましたか?

私たちの間では、アートは子供たちより先にあったので、アート活動は私たちにとって最初の「子供」だ、と冗談を言っています。

子供たちは私たちと一緒に美術館や展覧会を訪れて育ちました。私たちと同じ興味を持ってはいないかもしれませんが、いつも応援してくれます。親として、私たちは彼らのフィードバックや質問に耳を傾けます。私たちの視点が大きく異なることに、いつも面白さを感じます。それはちょうど、私たちの世界観が自分たちの親世代と異なると感じるのと同じです。私たちはアートを時にシリアスなものと捉えがちですが、究極的には楽しいものであるべきだと考えています。それは親と子の関係のようです。子供たちの成長とともに、アートプロジェクトで彼らと関われることは、喜びであり、特権でもあります。

Chow and Lin “The Poverty Line - Malaysia 202671202”

Chow and Lin “The Poverty Line - Malaysia 202671202”

ー作品の出発点が、『The Poverty Line』で見られるような、社会をリサーチに基づいた客観的なレンズで見ることから、ご自身の内面世界や家族を投影する、よりパーソナルな表現へと変化しているように見えます。ご自身の視点や芸術的関心は、時間とともにどのように変化したと感じていますか?

私たちのプロジェクトとその動機は、常に個人的な経験や考察から始まっています。当初は、作品の背後に身を隠しながら、視覚的な手法を通して私たちの考えを発表することを選んでいました。しかし、活動をさらに深める中で、アートとアーティストを切り離すことはできないと気づきました。情報や人生経験が通過していく器として私たち自身をも見つめるようになったこの変化は、人間性を理解していくことの延長線上にあります。この内面への転換の最中においても、私たちの核となる衝動は変わっていません。それは、社会構造と人間のあり方に対する、尽きることのない好奇心です。

データが持つ冷静な視線と、感覚的な表現が交差するChow and Linの作品は、社会構造の深層に静かに問いを立てる。新たな表現方法を用いても、その根源にあるのは2人の飽くなき好奇心と繰り返される対話である。最新作はホワイトストーンギャラリーシンガポールで開催される展覧会『Counterweight: The Systems of Two | A Two Duos Exhibition Curated by Tamares Goh』で目撃してほしい。

Counterweight: The Systems of Two

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