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虹のアーティスト靉嘔の個展がアメリカで開催へ|国立アジア美術館「靉嘔:愉快な虹の地獄」

2023.07.11
ART NEWS

靉嘔《レインボー・ナイト 4》(《Rainbow Passes Slowly》シリーズより)1971, silkscreen; ink on paper, 54.5 × 73.6 cm, gift of Margot Paul Ernst in memory of Mr. and Mrs. Norman S. Paul, Arthur M. Sackler Gallery, S1987.976.11, Copyright Ay-Ō

​​“虹のアーティスト”としてしられる靉嘔の個展「靉嘔:愉快な虹の地獄」が、アメリカにある国立スミソニアン協会国立アジア美術館にて開催されている。同アーティストにとって、アメリカの美術館における初の個展である。

同展は、国立アジア美術館が所蔵する74点を含む80点以上の作品から、靉嘔自身が「虹の地獄」と表現するところの、虹すなわち “可視光線のスペクトル全域を網羅する作品制作” の探求に迫る展覧会となる。70年近くにわたる国際的な活躍を紹介する本展で、靉嘔の世界の多面的な奥深さを体験することができる。

アメリカと靉嘔

靉嘔《バタフライ》, National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Washington, DC: The Pearl and Seymour Moskowitz Collection, S2021.5.5, ©Ay- Ō

「天国を描くのが難しいのは、多分存在しないからでしょう。一方、地獄は描きやすい。―皆、悪魔の魅 惑に興味を持つし、得も言われぬ陶酔感に満ちていますから」
ー靉嘔

靉嘔はアメリカにおいては、フルクサスのメンバーとして、そして草の根のポップ・アート運動を代表する先駆的芸術家として知られており、探求心、感覚への没入、そしてユーモアを通じて、世界の現代美術に永続的な影響を与えている。「虹のアーティスト」として世界的に知られる靉嘔(1931年-)は、東京のデモクラート美術家協会のメンバーとして活動を開始し、1958年にニューヨークに移住、前衛芸術家、詩人、パフォーマーが集うフルクサスと呼ばれるグループの中心的存在となる。

1950年代後半にニューヨークのアートシーンを席巻した抽象表現主義への応答として、靉嘔が触覚体験をはじめとする知覚的アートの試みを開始したのは、このニューヨーク時代。本展で展示される16点の「フィンガー・ボックス」は、鑑賞者に中身が見えない木箱の中に指を入れてもらい、中のものをただ触ることで感覚的な発見の瞬間を体験させる作品。またこの頃から、カラフルな虹のストライプ・モチーフを用いた作品を発表し、従来のイメージの枠にとらわれない制作を行うようになった。

靉嘔の虹

靉嘔《フロム・ザ・ディクショナリー4》(Rainbow Passes Slowly シリーズより), National Museum of Asian Art, Smithsonian Institution, Washington, DC: Gift of Margot Paul Ernst in memory of Mr. and Mrs. Norman S. Paul, S1987.976.4, ©Ay- Ō

靉嘔が虹に惹かれたのは、すべての色の基本である虹がアート作品における色彩をいわば民主化し、同時にユーモアと遊び心を表現できるものであったためであった。その後60年以上にわたって、靉嘔は専門的な技術を持つ摺師たちと協力して、シルクスクリーンを素材に用いた非常に手の込んだ制作活動を行い、比類ない彩度を実現しつつ、素材の表現できる限界に挑戦。靉嘔の作品は、人体や動物を題材にしたものから、葛飾北斎の「富嶽三十六景」《赤富士》といった日本を代表する芸術作品の再解釈まで、多岐にわたる。各作品テーマは、虹色の連続により、色彩の混沌の中心にある構造的な感覚を獲得している。

同展では、最もよく知られる虹色のシルクスクリーン作品と、初期に発表した触覚的で体験的なオブジェを一緒に展示することで、視覚と触覚の両方において、彼の作品が感覚の探求と無限の好奇心という同じ考えに立脚した連続的な表現であることが示されている。

国立アジア美術館について

米国スミソニアン協会国立アジア美術館は、アジアと世界に対する理解を深めるために、美術品の保存、展示、研究、解説に力を注ぐ国立施設。中国、日本、韓国、南アジア、東南アジア、イスラム圏の古代から現代までの作品を含む45,000点以上の収蔵品は、北米最大かつ最も包括的なアジア美術のコレクションの一つ。国内外の来館者、学生、研究者のための主要な情報源となっている。ワシントンD.C.のナショナル・モールに位置するこの美術館の展示室、研究所、アーカイブ、ライブラリーは、世界最大の研究機関スミソニアン協会の一部であり、通常、来館者数は毎年2700万人を超える。

開催概要

靉嘔:愉快な虹の地獄 Ay-O’s Happy Rainbow Hell
会期:2023年3月25日(土)〜2023年9月10日(日)
開館時間:10:00~17:30 *会期中は無休
入館料:無料
会場:国立スミソニアン協会国立アジア美術館 アーサー・M・サックラー・ギャラリー

展覧会に関する詳細と最新情報は美術館公式サイトにて、ご確認ください。
米国スミソニアン協会国立アジア美術館

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