人は、自己の意識が視覚では認識できない現実の本当の世界に触れ、その世界を照らし出したときにできる影のテクスチャーに包まれながら生きている。私の作品に触れた人は、無数にあるかもしれない世界を認識し、その世界の隙間から見え隠れする眩しくて計り知れない広がりに憧れや懐かしさを抱きながらいくつもの想像の扉を開くことができる。小さい頃の私がオルゴールを通して夢の扉を叩いていたあの頃のように。その扉を開ければ、いつも光の音が鳴り響いていた。意識は、踊る影の住人たちによって約束の地へと誘われる。
―塩沢かれん

幼少期の数年間をオランダで過ごした塩沢かれんは現在、東京造形大学大学院に在学中。作品を媒介としたコミュニケーション領域の拡張を一貫して模索しています。幼少期の記憶や日々の生活のなかでの感覚を平面に落とし込むほか、視覚以外で認識する世界の表象をめざし、音や光、立体など五感に働きかける表現形態を開拓してきました。
今展のテーマは「人間の記憶や心の深層にある風景の探求」。私たちが生きる現実のなかで看過されがちな心の声をすくい上げ、人々の知覚や認識の「橋渡し」としての作品を発表してきた作家が、またひとつ新たな想像の扉を開けようとしています。各々の作品は世界を構成する断片であり、光の音であり、声である―その光が、あなたの見慣れた風景にいつもと違う明るさをもたらすことを願いつつ。皆さまのご来廊を心よりお待ち申し上げます。