「私のスタイルは一番だ」—独学のアーティストである元永定正は自信たっぷりに言う。元永は具体美術協会の核となるメンバー。表現技法、前例のないフォーム、鮮やかな色彩や実験精神、といった新たな手段を模索した。初期において元永は伝統的な日本画の「垂らし込み技法に触発されたドリップ・ペインティングで名を成した。液体塗料の層をカンヴァスのなかへ不規則に投入し、現代アートへ応用したのだ。

のちに1970年代には、手で引っ掻いたようなフォームが再び登場するが、それはスプレー缶を用いたことによる。グラフィティアートやアニメにも近い、フレッシュなスタイルを創り出す。シンプルな線描と歪曲された原色の優美なパターンが特徴的な絵画の創造である。

「彼も人間である以上冷たい面もある。それでも手の届くところに彼の存在があるだけで暖かさに満たされる。いわばオーラのようなものね」―元永の妻・悦子の言葉である。元永を人間味のアーティストとして追憶している。

元永は唯一無二のユーモアのセンスと楽観性を持っていた。時に自らを「アホ派」と自嘲気味に語ったりした。その作風は自らのフィーリングにのみ忠実なもので、自らを嘲りつつも既成の美術理論や概念は無視する。その作家人生の後期においては、子供のための絵本を創作。元永のユーモア溢れるスタイルは、あらゆる年齢層に支持されてきた。

2013年春、ニューヨークのグッゲンハイム美術館にて具体の回顧展『GUTAI: Splendid Playground』が開催された。元永の「水の彫刻」は美術館の巨大な吹き抜け部分に展示、ビニールシートと染色した水からなるシリーズは、むしろハンモックのような趣をみせる。ビニールシートに歪曲され押し込められた重力は、水をボトムに集約させ、時々刻々の自然光が色彩を宝石のようにたゆたわせる。

元永には多数の受賞歴があり、第15回日本芸術大賞(1964)、兵庫文化賞(1986)、フランス政府文化芸術シュヴァリエ(1988)、紫綬褒章(1991)、大阪芸術賞(1992)、などが挙げられる。また、多くの美術館が回顧展として採り上げ、著名な機関ではポンピドゥーセンター(2020)、ニューヨーク・グッゲンハイム美術館(1966/1973)などがある。また、国立国際美術館、京都国立近代美術館、ニューヨーク近代美術館などに作品が所蔵されている。

注釈 1: 具体美術協会(1954-1972) – 最も影響力のある日本の戦後前衛美術運動。様々な新しい形式を実験した。「人の真似をするな!これまでになかったものを創れ」をモットーに吉原治郎によって主導され、具体アーティストたちは従来型の形式を打ち破った。作品はときには巨大なインスタレーションやパフォーマンスとして立ち現れることになる。メディウムと身体との間のインタラクティヴな関係性を強調した。代表的なアーティストに、田中敦子、白髪一雄、向井修二、前川強、松谷武判、上前智祐、名坂有子らが挙げられる。