西村達也個展「The CATS !!」について
西村の今回の個展の題材は猫である。今までの展覧会の展示は、具象的な風景画や純粋な抽象作品など様々なスタイル、題材、アプローチで制作されたものから構成されていて、動物を題材にしているものもあるにはあったが、一つの動物のモチーフだけで個展を開催するのは、今回が初めての試みである。
メインモチーフの猫は単純化・抽象化され、特徴的なビジュアルイメージとして展開され、色彩は華やかで、赤や青などの原色中心に黒と金が画面を引き締めると同時に変化のある画面が展開される。

西村は、画業のかたわらジャズダンスに力をいれており、永年続けているようだ。それを聞いて、意外に思ったが、本人の口から出てくるミュージカルに対する愛情には非常に深いものがある。普段の生活の中での嗜好や習慣が作品に表れてくるのは当然のことなのかもしれない。
西村の話を聞くと、「シカゴ」「キャバレー」「オール・ザット・ジャズ」といったボブ・フォッシーの作品が、特にお気に入りのようで、そのエッセンスやイメージが作品に反映されていることが判る。
今回のタイトルもボブ・フォッシーではないが、ミュージカルの名作「キャッツ」からインスパイアされたものである。

なぜ猫とミュージカル?
煙に巻かれるような話であるが、この謎は西村にミュージカルの舞台シーンの写真を見せられ、熱く語る本人の話を聞いて納得することとなった。
画面には原色のストライプやブロックで区切られた背景の上に何匹かの猫が登場してくる。
猫のポーズ、特にしっぽの位置や形はミュージカルのダンスシーンの決めポーズを正確になぞっていて、元の写真を見るとそれが理解できる。バックのシンプルで幾何学的な画面も舞台のダンサーである猫たちを際立たせるための背景と捉えると、最適な構成であるのかもしれない。

今回の猫の絵画には、背景が国旗やイメージパターンなどいくつかのバリエーションがあるが、すべての作品に共通しているのは、その画面の中には、まるで音楽のように色彩のリズム、ハーモニーが存在し、繰り返されるイメージパターンはダンスのステップのように持続され、しなやかな猫たちのポーズはダンサーのアンサンブルを思わせる。
展示作品を鑑賞した後には、華やかなステージショウを見たのと同じような高揚感が生まれてくる。

絵画には様々なスタイルやタイプがある。西村の猫の絵画は難しい理屈や絵画論で描かれたものというよりは、エンターテイメントあふれる楽しい画面構成であり、それは人を幸せにする作品だといえる。

最後になぜ猫なのか? 
それは会場でのお楽しみに!

軽井沢ニューアートミュージアム館長 松橋英一