ホワイトストーンギャラリー軽井沢では小林エリカ展『トリニティ』を開催致します。トリニティとは本来「三位一体」、キリスト教で神 (キリスト) の三つの側面を表わしますが、今展で作家が指し示すのは、1945年世界で最初に原子力実験が行われた場所—アメリカ合衆国ニューメキシコ州のホワイトサンズ・ミサイル実験場の中にある場所の名でもあります。
小林はその不可視性ゆえに放射能に惹きつけられ、文学やアートを通して表現することを試みてきました。ラジウムは世界ではじめて人の手によって取り出された放射性物質ですが、その半減期は1601年間。そうなるとマリとその夫ピエール・キュリーによって1902年にその手に取りだされたラジウムの放射線量が半減するのは3503年の未来になります。作家にとって放射能や放射性物質の是否を問うことは本分ではありません。むしろ関心は、その歴史をふり返り、未来に生きる人たちが、今を生きる私たちをどう捉えるかに想いを巡らせることにあります。
様々なメディウムによって表現された放射能は、私たちに生と死について考えさせます。過去の人間がもし違った選択をしていたら、私たちの現在の暮らしはどうなっていたのか。なぜ核爆弾は殺戮のために地上へ落とされ、なぜ今放射能に怯えながら生きなければならないのか。過去の歴史が変えられないなら、未来のために私たちは一体何ができるのか。小林エリカの軽井沢におけるこの示唆に富む展示を、是非ご高覧下さいますようご案内申し上げます。