ホワイトストーン・ギャラリー香港は川島優による香港初の個展『Re-Former レ・フォルメ』を開催いたします。会期は2020年12月12日から1月23日まで。今展のために制作された新作も含め、岩絵の具や墨で入念に描かれたモノクローム絵画の数々を展覧いたします。

川島優は1988年静岡県生まれ。幼少期を緑豊かな自然の中で過ごした経験は、人工的で無機質な世界に対する本質的な違和感をもたらし、現代社会のあちこちに潜む過分な情報に強い不安を抱く。現実に内在する「不安」の絵画的表現の影響としてフランスのギュスタフ・モローや英国のフランシス・ベーコンへ言及しつつ、川島は自らが現代社会から感知する不安を掘り下げる。フランス語の「レ・フォルメ」(改造)という単語を自らの絵画的表象のために再定義し、川島は幼少期の忘れがたい体験を再考したり、これまでの作品を再認識したりする。作家にとって「レ・フォルメ」とは、自己のフィルターを通し、「内的不安」に「生きるための意志」を注入する行為であり、それは無限に変化・発展しながらエネルギーの連鎖として知覚されうるものである。

今展のメイン作品のひとつであるIkarosは、ギリシア神話に由来し、傲慢とエゴによって破滅する人類を象徴している。川島は自らが生きる時代を現代のイカロス時代とみなし、不安と居心地の悪さを生のエネルギーへと変換することを作品に課す。情報氾濫時代に生きながら、人間は快楽と欲望に浸り、同時にひずみと葛藤にもがく。Remindは、作家自身のみならず鑑賞者に生きること本来の意味を思い起させることを目指すシリーズである。そのほか、抑圧された社会から承認欲求を得たいという人間の欲望を視覚化したGreed、未知の不安に直面するための強い意志を伝えるFix、情報化社会における予測不能で有害な変化・現象を金属腐食に喩えたErosionなどの新シリーズも併せて展示される。

川島は岩絵の具と墨とで和紙に描きこみ、表面を水で洗浄する。このプロセスを繰り返すことで、経年変化したコンクリート壁のような独自のテクスチュアが生まれる。作家にとって、この魅惑的なプロセスは、時の流れや、運筆のみならず自らの探求の軌跡をも視覚化する。川島の描く無表情で無機質な表情の3人の人物像のコンビネーションは、各々が現代社会の抱え持つ深淵を覘かせている。コンビネーションの妙により、個別の輪郭は失われ最終的な表現はム人格化する一方で、鑑賞者が感情移入しやすいものとなっている。川島の表現においては、感情は意図的に避けられる。それは鑑賞者に自由な含蓄を与える余地をのこし、各々の感情と向き合わせ投影できるようにするためでもある。しかしながら、川島の絵を見たときに押し寄せるのは、作家が逆説的に明らかにしたいと願う、深く内的な何か、である。自らの感情を第三者の目に深く浸み込ませることによって、作家は自らが抱える不安感と直面することができるのだ。

繊細かつ大胆に現代のイディオムを用いつつ伝統的な日本画の道を邁進しながら、同時に川島は現代に治癒を施そうとする。少なくとも、その作品を通じて鑑賞者に心地よさを提供しようとしているのだ。