ホワイトストーン・ギャラリー香港ではこの度日本人アーティスト矢柳剛の香港では2回目となる個展“Earth・Family”を開催いたします。本画、版画、立体、ミクストメデイアなど、これまでの作家人生の集大成となる展示となります。期間は3月27日(土)から5月8日(土)まで。

北海道帯広市に生まれた矢柳剛は70年以上にもわたり、鮮やかな異国情緒溢れる絵画を通して地球と生きとし生ける物全てに対する感謝の念を表現してきました。牧場主の息子として馬に囲まれて育ち、動物や自然との密接に関わり合う日常は、のちの遍歴と芸術的追求に多大なる影響を及ぼします。帯広農業高校を卒業し星薬科大学に入学するものの、中退し横浜の米軍基地にて画家活動を開始。1957年ブラジル行きの船に乗船、ブラジル、アフリカ、アジア諸国など南半球を旅します。

矢柳の作品は一見してそれとわかる断片化された構成、遊び心のある雰囲気、万華鏡のようなパターンで成り立っており、ほとんどの絵画や版画に見られる円形の不規則なゼブラ柄の黒い線は書道の影響を受けているといえます。
ヴィヴィッドな色とは対照的に浮世絵の要素を組み合わせた、日本の伝統的な形式と当時の大衆文化を現代的に描いたポップアートを融合させ、「ポップ浮(うき)」と命名。矢柳の芸術的実践は日本の美学に根ざしつつも、その肉声は目立って想像的でエキゾチックなものとなっていきます。ブラジルの野生動物、サファリの動物、熱帯気候との邂逅は、旅やプランテーションなどのシンボルとして作品中に浸透していきます。『地球は誰のもの』(2007年)、『幻想』(2012年)などは彼の一種の旅行記と言えましょう。しばしば鳥の眼や歪んだ遠近法が駆使された風景は想像力を刺激し、観る者を一緒にパズルを完成しているような心地へといざないます。『目配せの不思議』(2013)は、サイケデリック・アートを思い起こさせるような眩惑を生みますが、モノクロの錯視効果を呼び起こす『黒と白の無限』(2010)は60年代のオプ・アートの典型といえるでしょう。

矢柳芸術のもう一つの特徴はその「繰り返し」にあります。同様の構図、色面、エキゾチズムを全般にわたって見ることができます。特定の主題の作品を複数のバージョンで製作することはゴッホにも見られる特徴です。そのゴッホやオランダのポスト印象派の作品との出会いが若かりし矢柳をアーティストへの道へと歩ませたわけですが。

今展ではブラジルへのオマージュとなる一連の作品も展覧いたします。初期の作品である『パンタナル』(1958年)はブラジル滞在中に体験した熱帯の情熱、興奮が垣間見える、燃えるような色彩が特徴です。『リオの夜景』(1962年)はブラジルから離れてしばらくして描かれた作品ですが、採り入れられる色と主題に明らかな暗さが見てとれます。

『Earth. Family』 はギャラリーの2階スペースに、ブックコーナーを含む第一室は版画を中心とした展示となります。1965年より1968年の間、矢柳はパリで過ごし、そこでAtelier 17のS.W.ヘイターのもとで銅板を含むと版画の研鑽を積みます。
『愛の動物誌』、『地球・・家族』は1970年から1980年の間に制作された明るく、ユーモラスな版画の連作です。全ての宇宙と生きとし生けるものに関わる、矢柳のロマンチックな視座が強調されている作品です。

『外に目を向けましょう。帯広は私の生まれ故郷ですが、サンパウロもパリも故郷の一つです。新しい人々、文化、言葉に出会うことはひとつの芸術形態となりうるのです』

1954年以降の矢柳の作品は、パリやサンパウロのビエンナーレなど、世界各地で展示されています。北海道帯広美術館、国立近代美術館などの重要な美術館に収蔵されています。そのほか、パリ市立近代美術館、フランス国会図書館(パリ)、サンパウロ美術館(ブラジル)、ロックフェラー財団(ニューヨーク)、ロサンゼルス州立美術館などが所蔵。作家は現在、日本に住み制作活動をつづけている。