W담(daam): 清澄, (色や味が)うすい, 薄暗い, 落ち着いた, 穏やかな
淡(dàn | daam6): 温和, (色が)うすい, 爽やか, 無関心
たん|あわい(dan|awai):(色や味が)うすい, 薄暗い, あわい, 清澄

(2019年5月1日、香港)-この度、ホワイトストーンギャラリー香港において、韓国人アーティスト、ソ・スンウォン、キム・グンタイ、キム・ドクハンによるグループ展『淡』を開催いたします。今回の展覧会は、2019年3月、4月に香港の韓国文化院で行われた『韓国コンテンポラリーアート展』の続編になっており、駐香港韓国文化院、Art Chosunの協力・支援のもと開催されるコラボレーション企画となっています。

『淡』とは、東アジアで一般的に使われている単語で、複数の定義があります。 韓国語では(담、daam)、中国語では(淡、dan | daam6)、日本語では(たん|あわい(dan | awai))と読まれ、文脈に応じて色、味、あるいは心の状態を表すのに使用されます。 今展で韓国人アーティスト3名が表す『淡』は、韓国におけるアイデンティティの感覚、世界を穏やかな心で見る方便として用いられています。『淡』が表す心理状態は、禅仏教での無心になる修行とは違い、感情の混乱を排除した中で、自分の可能性を信じ、自信を育むことで、「落ち着き」や「穏やか」な心理状態を維持する事に近いのです。今展では、1960年代のソ・スンウォン、1980年代のキム・グンタイ、2000年代のキム・ドクハン、といった3世代にわたる韓国人アーティスト達を展示します。彼らの作品は、『淡』の本質を伝える韓国独自の美意識に貫かれています。

モノクロームを特徴とする単色画芸術運動の初期の画家であり、幾何学的なインスピレーションを得た運動『オリジン』の初期メンバーの一人、ソ・スンウォン(1941-)は韓国モダニズムの理論的な基礎を体現しています。50年以上にわたり、幾何学模様と背景にある「間(ま)」との相互作用の追求を通し、時間と空間の同時性にまつわる彼独自の美的理解を表現し続けています。 1990年頃から、以前の作品に見られた様なはっきりとした幾何学的模様は消え始め、境界を消し去る事で滑らかに重なり合う長方形から新たな空間の奥行きが表れ始めました。作家自身が述べるところによれば、この変化は老化の過程の一部なのです。

「私は年をとるにつれて、欲を取り除いてきました。最近は、私たちはどこから来たのか、そしてどこへ向かっているのかを考えています。芸術家にとって芸術は人生と精神です。ですから、私の考えが私の作品に反映されるのは当然なのです。」

今展では、2017年、2018年の最新作を展示します。キャンバスは静かで暖かい色彩で埋め尽くされ、それは視聴者を『淡』に対するより深い理解に誘います。

キム・グンタイ(1953-)は、韓国の軍事政権に対する強い学生運動を背景に起こったモダニズムと社会的リアリズムの芸術における衝突が激化していた1980年代前半から画家としてのキャリアをスタート。その混沌とした状況の中、キム・グンタイの芸術的な習慣と日々の内省は、彼を道教へと導きました。自身のアートと信念に対する禁欲主義によって、制作過程は自身の精神状態と密接に関係しています。時間だけが作り出すことができる層は、キムにとってとても重要なインスピレーションの源です。キムは、奥ゆかしく風化した泥の壁、伝統的な韓国の家屋、何世代も使われた素朴な青磁の船の表面、引き戸の古い桑紙の質感と色の中などに時間の経過による痕跡を感じ取り、 それら全てを自身の作品の中に表現しています。キムは、「感じること、聞くこと、見ることができない存在が実在する」と説明していますが、彼の瞑想的な作品は、この存在の側面を色と線の層で伝えています。

ソ・スンウォンとキム・グンタイが韓国のモダニズムの影響を受けた一方で、キム・ドクハン(1981-)は伝統的な素材である漆の使用を通して『淡』を表現する新しい世代です。漆を複数の色で重ねて繰り返し剥がし、各層の痕跡だけを残します。各色の層が完全に乾いてから別の色の層が塗られるまでには時間と忍耐が必要であり、この複雑なプロセスは通常6〜12ヶ月を要します。作家曰く、「プロセスが時間と空間の記録を形成する」と述べており、 剥がして任意の1つの層の痕跡だけを残すことによって、それらの蓄積された存在を捉え、単一の絵画の面で過去の個々の瞬間を写し出しています。同時に、古代の漆塗りの技法を使うことで、作品は何千年もの間保存されます。使用する素材に対する深奥なアプローチ、そして韓国の伝統的な韓服に触発された素朴な色の選択が、観る者の思考を刺激する印象的な作品を生み出しています。

3人のアーティストの作品は、『With Wind』や『コレスポンデンス』など、代表的なリー・ウーファンのシリーズ作品と並んで展示され、韓国が育んだ単色画の独創的な美をさらに強調します。視覚的な観点からこれらの絵画の核となる美を理解するだけではなく、彼らの表現に共通する感情、心理状態、その実在をご鑑賞の皆さまに感じて頂ければと思います。4人のアーティスト全員が西洋の伝統とは異なる、東アジアならではの視覚芸術へのアプローチを体現していますが、それは言葉で捉えることは困難です。キム・グンタイは、「鳥は一日中飛んでいるものですが、その跡は残さない」と述べることで、その難しさを伝えています。
展覧会は2019年5月1日から5月19日まで開催致します。

展示作家:
ソ・スンウォン / キム・グンタイ / キム・ドクハン